コカ・コーラBJH、「619億円減損」の根本理由 自販機事業が落ち込み、予期せぬ水害被害も

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一度失った売り場を取り戻すのは難しい。今上期の販売数量を災害前の前年同期と比較すると、スーパーで8%、ドラッグストアで6%減っている。さらに、供給態勢立て直し費用のほか、工場が再開するまでは遠方の工場から商品を運んでくるため、ただでさえ重い物流費がいっそう膨らむ。

まさに「泣きっ面に蜂」の状況だが、経営体制にも問題がある。それは、販売部門と商品企画部門が分離している点だ。

コカ・コーラBJHは製造・販売を行う会社で、消費者の動向をつかみやすい立場にある。しかし、商品の企画を行うのはその筆頭株主の日本コカ・コーラ社。本社の場所もコカ・コーラBJHは赤坂、日本コカ・コーラは渋谷と距離があり、スムーズな連携がとりづらい。

コカ・コーラBJHのある取引先幹部は「サントリーのように販売と企画が一貫している会社に比べ、意思決定が下るまでの時間がかかりすぎる」と指摘する。コカ・コーラBJH社員も「新製品の投入が遅いのは、販売と企画が分離していることが一因としてある」と認める。

日本コカ・コーラとの連携をアピール

こうした状況を反映して、今回の新中計では「ボトラーと日本コカ・コーラのこれまで以上の連携」が強調された。8月8日に行われた上期決算説明会には統合後、初めて日本コカ・コーラの首脳陣も登壇し、今後連携を強化していくことをアピールした。

「これまでのやり方は選択肢にない」と繰り返すコカ・コーラBJHのカリン・ドラガン社長(撮影:今井康一)

コカ・コーラBJHの先行きについては、「(巨額の減損処理で)膿を出し切った。今期で底を打つ」(野村証券の藤原悟史アナリスト)と、前向きに評価する見方もある。新中計では今後5年間で約350億円のコスト削減を掲げた。また、同期間中に約3500億円の設備投資を行う。自販機の設置台数を増やし、同時にIT化を進めるなど、あらためて自販機事業に注力する。

さらに140億円以上を投資し、埼玉に最新型の自動物流センター「メガDC」を2021年に竣工。年間8100万ケースの出荷能力を備え、工場の出荷作業を効率化する。

「『これまでのやり方』は選択肢にない」。3月に就任したコカ・コーラBJHのカリン・ドラガン社長は、この言葉を何度も繰り返した。自販機事業の拡大やコスト削減の徹底、内部構造の変革――。国内飲料トップは険しい道のりを進むことになりそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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