重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代

俊足と「ワイドビュー」で在来線の先駆けに

キハ85系で運用する特急「ワイドビューひだ」は名古屋―高山・飛騨古川を結び、一部は富山まで走る。大阪―高山間も1日に1往復が設定されている。

飛騨エリアの中心地である高山は、伝統的な建物が残る「古い町並み」といった市内の見どころのほか、北アルプスや世界遺産に登録された「合掌造り集落」がある白川郷への玄関口ともなっている。飛騨古川には大ヒットしたアニメ映画の影響で「聖地巡礼」をする旅行者が増えた。近年、とくに目立つのが外国人観光客だ。「乗務員の車内巡回の報告によると、お客さまのうち外国人が2~3割を占める」(JR東海)という。

2016年には通訳オペレーターと話せるテレビ電話や音声翻訳機能を備えたタブレット端末を導入。2018年にはすべての車両で無料Wi-Fiの提供を開始し、和式トイレの一部を洋式に改造するなど「おもてなし」対応を進めた。

車内放送は、例えば下呂駅に到着する際に「有馬温泉、草津温泉と並んで日本三名泉の1つで……別名『美人の湯』とも呼ばれています」などと下呂温泉を日本語と英語の自動放送で紹介をしている。

観光客やビジネス客だけでなく帰省の足として利用する人もいる。下呂市出身で首都圏在住の会社員の女性は、ワイドビューひだについて「新幹線から乗り換えるとやはり大きな窓が印象的。山や川の景色を眺めて地元に帰ってきたことを実感できます」と話していた。

紀勢本線は60周年

キハ85系のもう1つの活躍の舞台、紀勢本線も沿線に世界遺産・熊野古道をはじめとする観光地がある。特急「ワイドビュー南紀」は名古屋―新宮・紀伊勝浦を結んでいる。

7月に運行した「紀勢本線全通60周年号」(記者撮影)
記念列車を熊野駅のホームから関係者らが見送った(記者撮影)

今年7月には記念列車の「紀勢本線全通60周年号」が走った。紀勢本線は1959年7月15日、最後に残っていた熊野市内の三木里(みきさと)―新鹿(あたしか)間が開通、三重県の亀山駅と和歌山県の和歌山市駅が結ばれた。

熊野市の河上敢二市長は熊野駅での記念式典で、開通当時について「道が非常に悪くて、この地域は大雨が降ると津方面に出かけるのが困難なことがたくさんあった」と説明。「紀勢本線の開通によってやっと三重県の一員として認められた、そんなこともあったのではないか」と語った。

高山本線、紀勢本線の沿線地域は近年、高速道路などの整備が進み、バスやマイカーに対する鉄道の優位性はかつてほどでなくなっているが、通学や帰省、観光に欠かせない交通手段であることに変わりはない。これまで何度も自然災害に見舞われながらも復旧し、住民の生活や地元経済を支えてきた。

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