重低音で快走、JR東海「キハ85」が開いた新時代 俊足と「ワイドビュー」で在来線の先駆けに

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国鉄時代には電化計画もあった高山本線で、スピードアップの課題を解決したのが小型・軽量で高出力のアメリカ・カミンズ社製エンジン(製造はイギリスの工場)だ。各車両に2台を搭載。従来の国鉄車両は時速100kmまでしか出せなかったが、キハ85系は電車並みの最高速度120kmを実現した。

キハ85系の開発に携わったJR東海の森加久見さん(記者撮影)

森さんは外国製のエンジンを採用した経緯について「所要時間を短縮するために、時速120kmで走り、起動加速度を増やすとなると小型で高出力のエンジンがほしい。国内も海外も調べ、よかったのが海外だった」と説明する。

足回りも乗客の目には触れない技術的な面で、さまざまな工夫が凝らされた。変速機によって動力をきめ細かく制御できるようにした。台車は国鉄時代のキハ185系の台車をベースにして、車体をつなげる牽引装置を振動が少ないものに改良。車輪が線路に接する部分は「円弧踏面(とうめん)」と呼ぶカーブに強い形状にした。

新型車両のひな型に

キハ85系の投入により、それまで2時間48分かかっていた名古屋―高山間の所要時間を14分短縮。さらに、線路のポイントを高速通過対応にしたり、カーブの傾きを大きくしたりと、地上設備を改良することで2時間16分にまで縮めることができたという。

座ると膝の上まで広がる大きな窓が売りだ(記者撮影)

同社によると、「ワイドビュー」の愛称は1738通の一般応募をもとに決定した。その後、中央本線の「しなの」(383系)をはじめ、飯田線の「伊那路」(373系)、身延線の「ふじかわ」(同)といった電車で運用する特急もこの愛称を冠するようになった。

またキハ85系の外観は、前面が白地、側面は軽量ステンレスのシルバーで、JR東海のコーポレートカラーであるオレンジのラインを入れた。その後登場した同社のほとんどの新型車両は、近郊形も含めて同様のデザインを受け継いでいる。

次ページ時代とともに進化してきた
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