3つ目は「東京しごと塾」だ。これは3つのプログラムの中では、最も就職準備が整っていない人が受講するもの。受講生は2カ月間の職務実習を通じて、じっくりと正社員就職を目指す。
ジョブトレーナーを上司、受講者を部下に見立てたグループを作り、そのグループごとに外部企業に対して営業するという形式で、プログラムが進む。営業するにはビジネスマナーはもちろんのこと、プレゼン能力やPCを活用した資料作成能力が必要。そこで2カ月間にさまざまな職務実習をしながらこうした能力を身に付ける。期間中には企業との交流会で企業研究をする機会もある。
東京しごと塾は実習開始から、5カ月間、ジョブトレーナーが受講者の就活をマンツーマンでサポートする。そして就職した後も、定着支援を3カ月間継続する。ただ、実際は3カ月過ぎた後でも、受講者が東京しごとセンターを訪れて、ジョブトレーナーに職場の悩みを相談することは少なくない。
「Jobトライ」同様に、受講者は就活支援金を1日5000円、企業は謝礼を1日6000円、受け取ることができる。東京しごと塾の運営はパソナとパーソルテンプスタッフが受託し、年間各社4回ずつ、合計8回実施されている。
官民挙げて、非正規労働者の正規就職に向けてさまざまなプログラムを用意しているが、これだけでは非正規雇用の正規化は進まない。実はこうしたプログラムに参加したくても、参加できない人は多いのだ。生活のために非正規で働いているが、プログラムのために仕事を休むわけにはいかない。就活支援金が支給されても、1日5000円では不十分だろう。
正規雇用30万人増の壁とは
思い切って非正規の仕事を辞め、プログラムに参加したとしても、必ず正規就職できるとは限らない。優れた就職支援プログラムがあっても、参加するのは想像以上に困難と言える。
東京しごと財団の上野芳江・正規雇用対策担当課長は、「支援プログラムに加えて、非正規として働いている企業内での正規への移行や待遇改善も、検討されるべきではないか」と指摘する。
単に非正規を正規にしたり、単に給料を上げたりすることはできない。そこで非正規としての籍は確保したまま、勤務時間中に職業訓練校などへ通い、会社にとって重要なスキルを身に付けてから、正規へ移行する。会社に負担がかかるので、その負担に対し、国や自治体が補助するといった方法も検討されるべきだろう。
政府の氷河期世代への就職支援がこれから本格化する。正規雇用を3年間で30万人増やすため、解決すべき課題はまだまだ多い。
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