「裏方に回る力」がリーダーに必要不可欠な理由 経営学は自分に無関係と思う人に欠けた視点
リーダーというとメンバーの先頭に立つ、パワフルな人物像が思い浮かびます。でも昨今は、一人ひとりの個人の力を引き出すには、リーダーは時には裏方に回ることも有効だという考え方が新たに生まれています。
裏方に回って個人の自主性を尊重し、自己決定させることで結果を引き出していくという手法です。これが有効になった理由には、人間と労働の関係をめぐる、経営学での考え方の変化があります。
産業革命を経て20世紀、農村から都市に出てきた労働者たちは、工場での労働を「人間性の抑圧である」と考えていました。そうした人たちをうまく動機づけて働かせ、管理する方法を考えたのが経営学です。そこでは、組織の上位者が部下を力強く引っ張るような仕組みが求められていました。
しかし、今日では仕事の種類も増え、働く人の考え方も大きく変わりました。仕事は、賃金を得るだけではなく、自分がどう生きるかという自己実現の手段であり、社会貢献の形であるというように、人々は前向きに仕事を捉えるようになっています。
納得感を生み出す力
経営には、組織と業務成果を管理・変革するという役割があり、リーダーシップはそれを実現するカギです。20世紀からこの原則は変わっていません。
大切なことは、人間像は変わり続けるのですから、あるべき経営やあるべきリーダーシップというものも、どんどん変わっていくものなのだということです。
かつての「生活のために、仕方なく労働する」という人間像なら、リーダーに求められていたものは、従業員を監督し、動機づけて積極的に引っ張る役割でした。従業員をリーダーが統制(コントロール)することが求められていたのです。
人々の置かれた状況について解釈を与え、納得感を生み出すこと(センスメイキング)であるという考え方が、今日のリーダーの役割を言い表すものとして、注目を集めています。
現代の「自己実現のために、前向きに労働する」という人間像であれば、リーダーには、組織のビジョンを語り、従業員に今ここにいる理由を与えつつも、一人ひとりが自発的に仕事をするのを支え、行動を促すような役割が求められます。
こうした人々の感情に働きかけ、共感を生み出していく力のことをセンスメーキングといい、これこそが今日のリーダーの最大の役割なのです。
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