養護施設の子どもが「1+1=2」理解できない事情 「数字の概念」がわからない子どもたち
児童養護施設での人員配置は、平成24年度に基本的人員配置の引き上げが行われ、職員1人当たり小学生以上の場合5.5人と定められました(※1)。全国児童養護施設協議会によると、「それぞれの施設の近くには民家やアパート等を利用したグループホームが増えています」「より家庭に近い養育環境を整えるため、少人数グループでの生活を基本とする施設の小規模化に向けた取組み」が進められています(※3)。
ただ、子どもと深い関わりができる分、職員の皆さんの心労が増えているのも現状です。
「(職員さんの)本音は『忙しくて、大変なものはなるべくやりたくない』ということ。職員さんたちは、1人で約6人の親代わりをしています。食事を作って、連絡帳も全部見て、洗濯物もして。そういう中で、子どもの宿題を見たり、勉強をサポートしたりというのはすごく大変。
最初はボランティアをつけてやっていたのですが、ボランティアだと行けて週に1、2回になる。小学生だと放課後は1日20分程しか集中力が持たないので週1回20分の勉強をやってもあまり進まなくて。ボランティア体制ではなく、職員さんが1人1教科5分ずつ、1人10分ずつ関われば前に進むスタイルに思い切って変えました。その10分で、例えば、予習しなきゃいけない、解かせるまでに説得しなきゃいけないというのが毎日あると、続けるのが難しい」と、森山さん。
3keysでは、子どもたちだけでなく、勉強をサポートする施設の職員の皆さんも負担なく教材を導入できるよう最大限配慮した教材作りを意識しています。
「大人が教えなくても教材を見れば子どもが解けるような教材を作らないと、施設の職員さんがもたなくなる。教材だけ見ても子どもたちが『こういうことかな』と解けるような、説明がいらない教材にしていくことがポイントです。本当は(おはじきなどの)物などがあればいいのかもしれないのですが、物だと大人が管理するのが大変になる。あえて紙にすることで、大人も無理なく続けられるようにという視点で作っています」
根気強く通い続けて築いた職員さんとの信頼関係
森山さんは、職員さんの「本音」からニーズを掘り起こし、その都度教材に反映させてきました。しかし、信頼あっての本音。職員さんとの信頼関係を築くまでには、スタッフの地道で丁寧で根気強いコミュニケーションの積み重ねがあったと森山さんは話します。
「『この人たちだったら解決してくれるかも』という信頼関係がないと、職員さんも本音を言ってくれない。本音が出てこないと、適切な教材を作れないし、プログラムにもできない。月に1回訪問して、『1カ月どうだったか』『この教材解いてみてどうだったか』など、子どもが15人いたら15人分すべて聞きます。