養護施設の子どもが「1+1=2」理解できない事情 「数字の概念」がわからない子どもたち
最初は3〜4時間ヒヤリングしていました。『何に困っていて進まないのか』を聞きたかったので、否定せず、とにかく聞いて。翌月には、『こうやって落とし込んでみましたけど、これだったら使いやすいですか?』と持っていく。それを重ねていくうちに、『評価しに来ているんじゃないんだな』と伝わり、今では本音で話してくれるようになりました」
2011年から始めた小学生への学習支援。2施設で述べ100人の子どもたちと向き合っていく中で、それぞれの学力や環境に合う教材・カリキュラムがついに成功し、教材研究の成果が職員さんの声からも見えてくるようになりました。
子どもたちからの不満の声が消えた
「最初は施設の職員さんも成功体験がないんですよね。今までに小学生の学習支援をしてうまくいった試しがないから、『どうせやっても自分たちの仕事が増えるだけでしょ』というところからスタートする。でも、子どもたちの成果が出たり、子どもの問題行動が減ったり、『あの子毎日勉強しているらしい』という噂が施設の中で広がったりすると、だんだんと職員さんの中で広まる。今では、支援している2施設に関してはほぼ全員の小学生がうちの教材をやるまでに浸透しています。
今いちばんうれしいのは、『やりたくない』とか『これやっても無駄かな』という施設からの不満がまったく出なくなったこと。訪問する度に、『私たちもすごい勉強になるし、すごく手ごたえを感じている』『子どもたちがすごく勉強するようになっている』といういい報告しか上がらなくなりました」。
3keysがサポートしている施設の職員さんの1人は、3keysの教材を導入してからの変化をこう話します。
「かつて当施設では、職員と子どもと一緒に勉強しようという時間に、学校の宿題以外で用意するものは担当職員が用意することが多かった。ドリルをコピーするとか、オリジナルの教材を自作する職員もいました。ただ、それぞれの教材にばらつきが出たり、人的・時間的なコストが膨大にかかったりして、どうにかならないかと導入に至りました。
(3keysは)ただ教材を提供してくれるだけでなく、スタッフが施設まで来て時間をかけて打ち合わせをしてくれる。その子に教材のレベルがあっているか徹底的に考えてくれる。中学2年生の子が、僕が学習プリントを用意しているのを知っているので、『あれ頑張っているんだよ。あの勉強していれば根本のところもできるようになるんだということが自分の中でピンときた』と言ってくれて、すごくうれしかったです」。
「2施設でとどめるのはもったいない」と支援拠点の拡張を決めた3keys。森山さんが小学生からの支援にこだわるのは、現場での経験からくる強い思いがありました。