年間20万人が訪れる「北朝鮮観光」のリアル 北朝鮮を観光すると何ができるのか

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さらに、入国後には1人の旅行者に対し、最低2人の案内員とドライバーがつく。この点で、案内員=監視員と外国人からは思われてしまう。実際に、旅行中はつねに行動を共にするし、突然の予定変更もしづらい。この点でも、外国人による北朝鮮観光はいわゆる観光とは異質です。

──かなり窮屈な旅行ですね。

そういった制限が、旅行客にネガティブな印象を与えてしまうことは確かです。北朝鮮には風光明媚な所もあれば、冷麺といった朝鮮料理を純粋に楽しめる機会もある。それでも、どこか楽しめない、という気分が残る。

それは北朝鮮の国の体制や社会が、日本とあまりに違うためです。グローバルな情報や体験を共有できる時代ではあるものの、それができない国もまだある。北朝鮮はそのうちの1つです。

結構重要な案内人の役割

──案内員は監視するだけ?

基本的な任務は旅行者の監視ですが、それだけではありません。認識のギャップから生じうるトラブルを未然に防ぐという役割があることも事実です。日本人が他国で行うのと同様に「この程度なら、やっても大丈夫だろう」と考えてしたことが、北朝鮮では重大な事件へと発展しうる。最高指導者に対する言動もそうだし、現地で写真撮影が禁止されている所でカメラを向けてしまうという行動もそうです。

案内員には、外国人旅行者にありがちな認識ギャップを埋め、問題を起こさずに旅行してもらうという役割があることも知っておいたほうがいいでしょう。

──観光業の活性化は北朝鮮にどのような影響を与えますか。

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現在、観光客の多くが中国人であるがために、外国人の受け入れに否定的な雰囲気にならないか危惧しています。すべてがそうではありませんが、北朝鮮で傍若無人な振る舞いをする中国人は少なくない。問題が発生すると、お金ですべて解決しようとする傾向もあります。

そんな中国人らと接するのは北朝鮮内のエリート層で、彼らは社会的な影響力を持ちます。北朝鮮の道徳や美風にそぐわない、目に余る外国人観光客の行動に「観光業はしんどい、外国人は制限したほうがいい」とさらに門戸を閉ざすことにならないとも限りません。観光は、いわば「草の根の安全保障」も担っている。たかが観光だが、されど観光でもあります。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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