MMTが「就職氷河期世代」に支持される深い理由 新理論による「現実」対「虚構」の歴史的転換点

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なぜ、主流派の経済学者や政策担当者たちは、MMTに対して、このような不誠実な態度をとり続けるのであろうか。

意外なことに、その答えは、シュンペーターが教えてくれる。

ちなみに、シュンペーターは、MMTの形成に大きな貢献をしたミンスキーの指導教官である。ミンスキーは、本書の著者レイの師であるから、レイはシュンペーターの孫弟子ということになろう。

あまり知られてはいないが、シュンペーターは、知識人、とりわけ経済学者の在り方にも、非常に強い関心を抱いていた。

シュンペーターが指摘した「経済学者の不誠実さ」の理由

例えば、大著『経済分析の歴史』の未定稿の中で、シュンペーターは、科学について、次の3つの論点を挙げている。

第1の論点は、科学の進歩についてである。

どの科学者も、独自の視点から理論を構築していくのではなく、専門の科学者たちの間ですでに確立された学説や方法を引き継ぎ、それを基礎として研究を進めるものである。

しかし、それゆえに、科学が既存の理論の枠組みから逸脱することは、極めて難しくなる。

既存の科学構造がもたらす抵抗のせいで、学説や方法における大きな変化は転換という形ではなく、最初は遅れ、そして後に革命という形で起きるのである。そして、その過程の中で、恒久的に価値があるかにみえた、あるいは未だすべての成果を収穫する時期に至っていない既存の科学構造の諸要素は失われることになる。(『経済分析の歴史[上・中・下]』)

このようにシュンペーターは、クーンの「科学革命」説に先行する議論を展開するのである。

第2の論点は、「世代」の問題である。

科学は継続性のある構造を有しており、学説や方法は容易には変更されない。この継続性は、同じ時代に属する科学者たちはその姿勢も類似したものになるという「世代」という現象によって理解し得る。(『経済分析の歴史[上・中・下]』)

ということは、科学の転換は、環境の変化だけではなく、世代の交代によってももたらされるであろうということだ。

第3の点は、経済学者という社会集団の問題である。

科学者たちは特殊な社会集団を形成するが、「経済学においては、この集団は成熟するまでに長くかかったが、成熟してみると、物理学におけるものよりもはるかに重要なものとなった」。(『経済分析の歴史[上・中・下]』)

この経済学者という社会集団について、シュンペーターは、主著『資本主義・社会主義・民主主義』においても、「知識人の社会学(the sociology of the intellectual)」として考察している。そこで彼が「知識人」と言っているのは、端的に「経済学者」と読み換えてよい。

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