中学退学「東大ありき」受験に挑んだ少年の結末 塾3つと家庭教師を並行させた子の"その後"

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「しょせんそのレベル」。入学を決めた後も、二言目にはこう漏らし、剛さんに高校受験でリベンジするようにとたたみかけたという。一方、剛さんのほうはというと、高校受験に挑む気持ちはさらさらなかった。入学した学校は普通に過ごせば大学まで上がれる。「もうこのままでいい」。だが、母親の東大への憧れの火が消えることはなかった。

中学に入るとすぐに高校入試のための塾に通塾を開始。本郷三丁目にある進度が速いことで有名な塾に通い始めた。母親が調べてきた情報によると、その塾は中1の段階で、中3までの数学と国語を終わらせるという。

入塾してみると確かに進度が速く、スパスパと単元が終わっていった。中2からはSAPIXに入塾、週3日の通塾生活を続けていた。幼い頃から塾に通い慣れているとはいえ、入学直後からのリベンジ通塾は、まだ幼さの残る中1の少年にとってはストレスだったのか。心の悲鳴はその後、意外な形で表れることになった。

「塾が嫌になってきて、夏期講習のときなんか、母親に内緒で塾に行く途中の電気屋でテレビを見て時間を潰し、帰ったこともありました。高校野球の中継とかを見てましたよ」

好きな野球も辞めさせられて、ひたすら勉強を強いられてきた日々。だが、母親に「受験はしたくない」と伝えることなどできなかった。「言ったところで、聞いてもらえませんから……」。

やり場のない気持ちが爆発したのか、中2の後半、剛少年は思わぬ行動を起こしてしまう。握りしめた拳で同級生を殴るようになった。相手は特定の1人。数カ月にわたり、繰り返し繰り返し、何も悪くないその子の腹をパンチした。傷は服に隠れて見えないため、いじめは中3になるまで周囲に気づかれなかった。

「本当に、なんであんなことをしたのか、彼には申し訳ないことをしました。本当に申し訳なかったなって思います」(剛さん)

悪いことは、いつかはバレる。標的となった少年が風呂に入ろうと服を脱いだとき、母親がお腹のアザに気づいた。母親は学校に連絡、剛少年のこれまでの悪行が白日の下にさらされた。こうして中学3年生の10月、剛少年は自主退学となった。

それでも、母・敏子さんはまったく動じる様子はない。「こんな学校、中退できてよかったのよ」。敏子さんの口からは思わぬ言葉が出てきたという。精一杯の強がりだったのか、敏子さんはそれ以上のことは言わなかった。

母親主導の受験から本人主導の受験へ

中3の11月に地元の公立中学に転入するなど、“ワケあり”なことは誰の目にも明らかだった。

「これはさすがにまずいと思いました。高校受験してどこかに入らなければ、後がない」

そうしてはじめて、勉強に対するエンジンがかかった。まずは受験の戦略を練らなければならない。都立高校は内申書が必要なため、もはや諦めるしかない。

次ページ中3の2学期の途中で内申書がつかない…
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