北極へ挑む男、41歳荻田泰永の過酷な冒険の価値 1回に1000万円をかけ、極地への極限の冒険
つまり、それまで他人からの価値は0円だった荻田の冒険は、2012年の北極点挑戦を境にして、一気に1000万円の価値がつくことになった、ということになる。冒険の価値が急激に上がったことについて、理由を聞いてみた。
「例えば、夏休みに、他人からお金をもらってハワイ旅行に行ったら、心から楽しむことができますか? なかなか楽しめないですよね。それと根本は変わらなくて、とくに、初めの頃は、自分のためにやっていることなので、お金なんてもらいたくないし、もらうべきじゃないと思っていました」
そう前置きしつつ、荻田はさらに言葉を続ける。
「ただ、いつかその時期がくるだろうとは思っていました。いざ、北極点を目指すとなると、1000万単位のお金が必要だとわかった。“あぁ、ついにその時期がきたな”と。
冒険の価値がどうやってついてきたかを説明するのは難しいのですが、価値は初めからあったはずなんですよね。例えば、絵描きだって、描きたいから絵を描いていると思うんです。
でも、描いたら、そこに価値が生まれる。その価値をほかの人が気づくかどうかは、別問題ですけど。その絵が誰かの目に触れて、価値に気づかれるんです。だから、ちゃんとやっていれば、いつかこの冒険の価値に気づいてもらえる日がくるだろうなというのは、冒険を始めた頃から感じていました」
荻田の冒険にお金が集まるワケ
一般的に、スポンサーを募るとき、企業に対してそのメリットを説明し、その金額に見合うサービスを用意する。だが、荻田は企業にスポンサーをお願いするにあたり、いわゆるプレゼンをした記憶はないという。
「人からお金を集めなきゃいけないとき、いちばん大切なのは、プレゼンのうまさでも、口のうまさでもない。
どれだけ信頼してもらえるか。どれだけ自分の言葉に説得力があるか。そのために北極点挑戦までの10年間があったと思う」
過去の冒険があったからこそ、2012年の北極点への挑戦の際に、多くの人が価値を見いだしてくれたというのだ。
では、サポートする側は荻野の冒険にどのような価値を見いだしているのだろうか?
無料会員登録はこちら
ログインはこちら