日本と真逆、英名門校の知られざる教育の中身 エリート輩出校の誰の目にも見える「賞と罰」
じつは奨学生とは何らかの優れた資質を見込まれて入学した生徒で、学資金を貸与されないと修学が困難な生徒ではない。学費の免除は5%だけ。つまり「奨学生になる」ということは「親の金銭負担を軽くする」ことより「名誉ある称号を受ける」という意味合いのほうが大きい。
ハーロウ校のように生徒手帳に奨学生であることを明記する学校はまれだが、名門パブリック・スクールでは入学時に奨学生を公表する。パブリック・スクールによっては奨学生だけが住む寮が用意されたり、奨学生だけが卒業後も学校付属の施設を使えるなどの特典があったりする。
日本でこのようなことをしたら、いじめやひやかしの対象になりはしないかと思った。そして、生徒間の差を「見えないように」する日本の学校との大きな隔たりを見せつけられた。
剥奪される可能性もある
奨学生の称号は1度授与されたら卒業まで必ず保持できるわけではなく、成績が著しく低下したり、授業態度が芳しくなかったりした場合、剥奪される。この生徒手帳は各学期初め、つまり1年に3回、全生徒と全教員に配られる。生徒は毎日のスケジュールを調べるために日常的に利用する。また生徒の親の手元にも学校から送られる。奨学生の情報がつねに親にも生徒にも共有される仕組みなのだ。
木枯らしが吹くようになると、生徒の多くは学校指定の紺色のセーターをブレザーの下に着る。しかし水色や薄いピンク、えんじ色などの無地のセーターを着ている生徒を時々見かけた。不思議に思ってその理由を水色のセーターの生徒に聞くと、
「僕は監督生だから好きな色のセーターが着られるんです」
監督生とは学校の代表として生徒の生活指導を担当する最上級生だ。校長や教員の推薦によって12の寮からたいてい各2人選ばれ、合計約24人で、その中から1人が生徒代表、1人が副代表に就任する。
一般の生徒と違う服装をしている生徒が存在することに最初はびっくりしたが、だんだんとこのようなあからさまな区別にも慣れていった。
このように、下級生の見本として選ばれた生徒を目立つようにするという方針が徹底されている。
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