「Appleカード」はなぜそこまで注目されるのか iPhoneユーザーの斬新なクレジットカード

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アメリカで生活していると、現金をほとんど手にしないキャッシュレス社会を、クレジットカードやデビットカードで実現してきた。しかし実際に経験してみると、極めて問題が多い。

その大きな理由はセキュリティーだ。2010年代前半、カリフォルニアで暮らしていても、6カ月に1度のスキミング被害は「仕方がない」「まあ、その頻度で起きるよね」という会話が成立するほどだった。

クレジットカードなら補償されて懐を痛めなくても済むかもしれないが、銀行口座と紐付くデビットカードでそれが起きると、預金から不正利用されてしまい、非常にやっかいな話になる。

実際、1981〜1996年に生まれたY世代(Gen. Y)は、その前のX世代よりも、クレジットカードを持つのが遅い、というデータがある。確かにカードの不正利用への恐れが高いのも確かだが、紐解いていくと、そもそもクレジットカードから縁遠くなったことに原因がある。

2009年の法律「The Credit Card Accountability Responsibility and Disclosure Act」で、若い世代のカードによる負債予防策が講じられた。大学のキャンパスなどでのクレジットカードのプロモーションが厳しく制限され、これによってアメリカの大学生のカード口座開設は17%減少した。

Apple CardはiPhoneから簡単に作ることができ、あらゆる情報を、iPhoneのWalletアプリから確認することができる。また年会費や遅延損害金といった手数料がかからない点も、若い世代のクレジットカードに対するハードルを下げることになる。

そうしたターゲットが成功している可能性が高いのは、Apple Cardに対する反応からも読み取れる。

年齢層が高い世代は、「わざわざApple Cardを作らない」「作るかもしれないがメインカードにしない」という反応が見られ、同様のコメントは日本でも散見される。もしそう思ったのであれば、Apple Cardが狙うターゲットに当たらない、という解釈をしてもよいだろう。

「サブプライム」をターゲットとする賭けの側面

Apple Cardは、アメリカの1億人を超えるiPhoneユーザーで、特にこれからクレジットカードを持つ人々にとって魅力的なサービスと言える。あるいは、そうした人々にとって「唯一の選択肢」と言えるかもしれない。

CNBCはApple Cardの登録が、より低いクレジットスコアの人でも可能だったことを伝えている。アメリカのクレジットヒストリーから算出される信用力のスコア「FICO」が630でも、Apple Cardを使い始められたという。

FICOスコアは300から850までの範囲で社会保障番号と紐付いて個人の信用力を表しており、670以上が「Good」とされる。740以上の人は「Very Good」で「延滞する可能性が22%、深刻な支払い不能に陥る可能性が1%」であるとしている。

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