アマゾンの「コンビニ」はここまで徹底している リアル店舗の進化が映す本質的な意味

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第5に、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)とアマゾンが表裏一体であることです。AWSは今や、クラウドコンピューティングの市場で3割のシェアを握るトップ企業です。すなわち、アマゾンは、世界一のクラウドコンピューティングであり世界有数のテクノロジー企業のAWSに支えられた企業ということになります。AWSから見れば、同社はアマゾンという世界一の小売ECをクライアントに持つテクノロジー企業とも言えます。EC本体とAWSがクルマの両輪となり相乗効果を生み出しているのです。

私たちは、さらなる進化を遂げたアマゾンの姿を、「アマゾン・ゴー」と「アマゾンブックス」に見ることができます。以下では、それら進化がもつ本質的な意味を読み解いていきます。

進化するアマゾン

① アマゾン・ゴー

筆者がアマゾン・ゴーのシアトル1号店を訪れたとき、そこで目にしたのは驚くべき光景でした。通りから店内を覗くと、右側にはガラス張りのオープンキッチンが。そこでは何人ものスタッフがサラダやサンドイッチを作っているのが見えます。清潔感を象徴するかのような白いユニフォームの上から、アマゾン・ゴーのロゴが入った緑色のエプロンを身につけ、手際よく作業を進めていくスタッフたち。

アマゾン・ゴーのシアトル1号店。ゲートでスマホをかざすだけで、店内品の購入ができる(筆者撮影)

アマゾン・ゴーといえば「無人レジコンビニ」が代名詞だったはずです。入店時に自動ゲートにスマホをかざし、あとは商品を手にしてそのまま出ていくだけ。それを実現させている最先端テクノロジーは、店内の至るところにあるセンサーやカメラの数から推測することができます。

しかし筆者はアマゾン・ゴーの真価は「無人」とは別のところにあると分析したのです。ロボット化・AI化の急先鋒であり、もともとECとして成長してきたアマゾンが出店するリアル店舗とはどのようなものか。そこにはどのような狙いがあるのか。これまでの企業とは決定的に違う狙いがあるはずです。筆者はそこに注目していました。

1点目は、「超有人店舗」だったということです。「無人レジコンビニ」というキーワードばかりが注目されがちなアマゾン・ゴーですが、実際には、多くのスタッフがオープンキッチンで働いていました。むしろ「ここで売っているサンドイッチはわれわれ人間が作っている」と、有人店舗であることをあえて見せ、誇示しているかのようでした。ガラス張りの明るいオープンキッチンでの調理は、食材がフレッシュであること、調理に手間暇をかけていることを顧客に訴求する効果が確実にあります。

2点目は、ロボット化・AI化を推し進めてもなお、「最後の最後まで人に残る仕事(人がやるべき仕事)」をロボット化・AI化の急先鋒であるアマゾン自身が示す店舗だったということです。表から見えないところでロボットが作ったサンドイッチよりも、自分が見えるところで人が作った、まさしく手作りのサンドイッチ。それはロボットがいかに進化しようと、最後の最後まで人に残るニーズではないでしょうか。無人のようで無人でないアマゾン・ゴーは、人間が潜在的に持つ欲望や本能を見抜いているかのようでした。

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