れいわとN国党に通じる不安な個人への訴求力

見慣れた現実が「別の現実」の介入で反転する

「れいわ」は最初から有権者と直接コミュニケーションができる「街頭演説」に軸足を置いていた。そこでは、山本氏が自ら言及していたように「想定外の質問」なども寄せられる。

当然手元に資料がなかったり、勉強不足で答えられなかったりするものも出てくる。一般的に、政治家にとってリスキーともいえる場だが、それを「市井の人々」に直に向き合う機会と捉え、「庶民と対話できる政治家」というブランディングに見事成功した。自分たちの声を確実に国政に届けてくれるという信頼性を獲得したのである。9月以降、山本氏は全国を「しつこく回る」と言っており、この運動のスキームはより盤石なものになりそうだ。

「N国党」は、以前から立花氏を含む所属議員の携帯電話の番号を公開し、集金人に関する「苦情処理」の窓口を公言しているとおり、有権者との直接コミュニケーションが大前提になっている。8月6日公開のYouTubeの動画では、中学1年生の男の子が泣きながら電話をかけてきた話を披露し、悪質な集金人は「これからロックオンして追いかけ回す」などと宣言するほどである。また、同党は「インターネットによる直接民主主義」を推進する考えを示している。

要するに、両党とも「不安な個人」を焦点化し、寄り添う姿勢を明確にしている。

利益団体にではなく、「庶民」に寄り添うスタイル

既存の政党は、基本的にいくつかの主要な利益団体の意見を吸い上げざるをえないため、表向き口当たりのいいことを言っていても、最終的に「庶民」が切実に求めている政策から乖離しやすく、個々の政策の優先度にもズレが出がちだ。

だが、れいわとN国党はその手段や方向性にかなりの違いがあるものの、「消費税廃止」「NHKのスクランブル化」という庶民の生活実感に密着した公約を打ち出し、前述のような個人の意見に耳を傾けるスタイルを貫いている。

もちろん、両党とも議会制民主主義=間接民主主義の枠組みの中にいる。しかし、山本氏は政見放送で「私たちがお仕えするのは、この国に生きるすべての人々」と言い、立花氏は「令和の百姓一揆」と表現したように、どこかの利益団体に与せず「一人ひとりの庶民の意志」に従うイメージを明確に掲げ、支持者らに「政治上の意志決定への直接参加」に近い納得感を与えている。

いわば"間接化"の弊害によって、自分の存在すら認知してもらえず、社会的に屈辱的な境遇を強いられ、未来の展望を描けない世界にノーを突き付ける「直接民主主義的なものへの期待感」である。これをポピュリズムと言い切るのは簡単だが、「れいわ」も「N国党」も右派・左派系問わず広範な人々を取り込んでいることが、既存の政治体制に対する「絶望の深さ」を表してしまっている。

ここで1つの重大な懸念事項が持ち上がる。

参院選の際、山本氏が自らを(テレビに映らない)「放送禁止物体」と呼んだことに象徴されるように、「れいわ」フォロワーや支持者の目から見ると、大文字のメディア=マスコミによって形作られた世界が「反転」して見えることである。これは「N国党」も同様だ。

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