お盆休みの「1ドル105円割れ」定着に注意が必要

「円高は進まない」という思い込みはヤバイ

その答えを探るべく、前述の「アンカリング」「検索容易性」などの投資家のバイアス事例で説明しましょう。

今、ある個人投資家がネット証券でテクニカル分析ツールの一つである「フィボナッチ・リトレースメント」の節目の値を、トレードの判断基準にしていたとします。

フィボナッチ・リトレースメントとはある期間の高値、安値をもとに、戻りのメドや節目をはかる分析手法です。ドル円でいえば、2015年以降のザラ場の円高、円安の水準をそれぞれ安値(2016年6月24日の99円02銭)、高値(2015年6月5日の125円86銭)として節目を計算した場合、50%の水準が112円44銭、38.2%の水準が109円27銭、23.6%の水準が105円35銭、などと計算します。

つい最近までのドル円レートの価格の範囲が109円27銭(38.2%)と105円35銭(23.6%)の間で推移しているので、「105円35銭近辺もしくは、やや行き過ぎたとしても心理的節目の105円程度で止まるので大丈夫だ。フィボナッチ・リトレースメントの考え方は分かりやすいし、結構当たる。だから今回もその投資判断が正しいに違いない」と短絡的に信じ込むことなどがまさに「アンカリング」「検索容易性」「自信過剰・過信」のバイアス例として挙げられます。

もし本当に105円35銭前後で止まるのであれば、良いバイアス、つまり自分に適した投資の判断軸を持って成功した良い「アンカリング」となります。一方、ドル円がその水準で止まらなかった場合は、「思い込み」からリスク管理であるロスカットができなかった投資の失敗例として、悪い「アンカリング」になるわけです。

105円前後で止まるという保証はない

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ここでいいたいことは、投資成果の視点では、利益が上れば「良いバイアス」、損をすれば「悪いバイアス」ということになり、「バイアスを持つ投資家=非合理的な投資家」ということでは必ずしもないと言うことです。

これを筆者と仲の良いFX個人投資家に話をしたら、「なんだ。バイアスを持つ投資家を失敗の典型例のように言っていたわりに、結局は利益を上げれば良いバイアスを持つ合理的な投資家みたいになるわけか。『夏休みに日本人がフラッシュ・クラッシュの円高で損失を拡大させる恐れがあるかもしれない』という見方も、結局は一つのバイアスじゃないか!」と言われました。

もし105円前後を突破すれば、今後は心理的節目の100円や、2015年以降のザラ場の円高水準である99円02銭(2016年6月24日)が視野に入ります。

「己を信じたものだけが救われる。レバレッジを存分にきかせてここからの円高余地の小さいドル円の強気のロング(ドルの買い持ち)あるのみ!」などといって、強気のFXポジションを積み上げていたら・・・。いずれにしても、フィボナッチ分析が有効でも、ドル円が105円前後で止まるという保証はありません。

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