見学して印象的だったのは、42歳の筆者と同世代と思われる参加者も少なくなかったこと。事故や急な大病などで伴侶を亡くしたのだろうか。人間の死はいつどんな形で訪れるのかわからないのだ。
自己紹介をしながら、他の人の話を聞きながら、涙を流している人がたくさんいた。しかし、日中の明るい会場のおかげなのか重苦しい雰囲気にはならない。思いがけずに戻った独身生活の大変さを話す人がいるのだろう。各テーブルで温かい笑い声も起きる。
「『この会に参加して初めて涙が出せました』という方もいます。子どもがいたりして家では泣けない人もいるのです。同じ立場の人だけがいる場所で気持ちを吐き出すことが立ち直るきっかけになります。最初は暗い表情でも、自己紹介を繰り返すうちに必ず笑顔になるのが天国組さんの特徴です。今日は新規の方が20人もいらっしゃいますが、何度も参加される方も多く、『この会に参加することが生きがいです』なんておっしゃっていただける方もいます」
進行の合間に、林さんは丁寧な言葉遣いで解説してくれる。神父さんのような風貌の人だなと思っていたが、前職はドトールコーヒーのフランチャイズ店のオーナーだったという。どのようなきっかけと思いで天国組会を始め、続けているのだろうか。死別という理由で独身に戻った人にどんな言葉をかけたいと思うのか。別の日にインタビューをさせてもらった。
「天国組会」が生まれるまで
――前職とはまったく違うお仕事を始めた経緯から教えてください。
飲食店のオーナーは体力勝負の仕事です。体調を崩してしまったこともありました。年齢を重ねても長くできることはないかと雑誌などで探して、バツイチ専門の婚活パーティーを始めたのが2001年です。
私自身がバツイチで、2012年に再婚をしています。2001年当時は、自分もパレット倶楽部のような会を探していたのですが、当時はネットで探しても怪しげな交流会が少なくなく、参加者にできるだけ安心感を与えられるような会を自分でやってみることにしました。
――当初は離別した人と死別した人を区別せずに交流会をしていたそうですね。
はい。何度か開催していると、「離別と死別は違う。分けてほしい」というご意見を聞くようになりました。それが天国組会の始まりです。
天国組さんの特徴は、「独身の異性がいるところに参加するのは亡くなった伴侶に対して申し訳ない」という気持ちを強く持たれていること。だから、天国組会の主目的は男女の出会いではありません。まずは元気になることを目的としています。自分が元気にならないと新しい出会いを受け入れることもできませんから。
伴侶を亡くす経験は最大のストレスとも言われています。悲しみのあまり家にひきこもったり、逆に思い出がたくさん残る家にはいられなくなる人もいます。なぜ自分だけが不幸なのかと思い詰めてしまうこともあるでしょう。
つらい気持ちを友だちに話しても、相手が死別の経験がない限り、「わかるよ」なんて言われてもカチンときてしまうこともあります。あなたに私の悲しみがどうしてわかるのか、と。
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