都立病院の再編-小児病院廃止は誤り、改革後も脆弱な周産期医療《特集・自治体荒廃》

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府中の新センターはハイリスク出産に対応

新センターは、隣接する府中病院の産科とタッグを組む。ハイリスク出産が想定される妊婦は事前に産科に入院し、赤ちゃんに異常があれば新センターのNICUに運ぶ。

都内の新生児の3分の1が産まれる多摩地区で、ハイリスク出産を扱うのは、民間の杏林大学病院ただひとつだ。母体搬送の依頼件数は、04年の約150件から07年には約350件へ急増。5割近かった受け入れ率は3割に低下した。15床のNICUは常に満床。「正常出産を制限するかどうか、ギリギリの状態まで追い込まれている」と岩下光利・杏林大学産科教授は語る。

それだけに、新センターにNICUが増えることで、多摩地域の周産期医療は確かに前進する(下図)。だが、楽観視もできない。

医療関係者からは「新センターがハイリスク出産をどこまで積極的に取り扱ってくれるのか」と不安視する声が上がっている。東京都病院経営本部は「年間1500~1800ぐらいの出産に対応できる施設にしたい」としながらも、ハイリスク出産をどの程度受け入れるかについては明言してこなかった。

ハイリスクの出産を受け入れている愛育病院(港区)の中林正雄院長が指摘する。「都立の場合、安くて設備が良ければ、正常出産の妊婦がどんどん集まってしまう。そうなると、開業医がハイリスクの妊婦を送りたいと思ったときに送れなくなる。都はハイリスクを中心とした高度医療を担うと決めてほしい」。

正常出産は、病院の収益源だ。人手が少なくて済み、時間もそれほどかからない。反面、ハイリスク出産の場合、医師3人に看護師、助産師の計5人が2時間つきっきりでも、診療報酬の上乗せは、わずか2万円程度だ。民間では限度があるため、高度な医療機能をもつ都立の新センターが積極的に受け入れる必要があるのだ。

高機能の新センターも地域の小児病院も、都民の大切な資産だ。三つの小児病院を残すことを再考してもいいのではないか。


(週刊東洋経済)
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