東京五輪で建設した競技場はその後どうなる? アスリートも都民も使える後利用が重要だ
五輪・パラ前は各施設への関心が最も高まっている時期で応募者も殺到しそうな気配だが、その後の更新タイミングで高い価格でネーミングライツを買い取ってもらえるかはやはり施設の稼働状況によるのではないか。そういう意味でも、赤字見込み施設を「集客力のある場所」へと価値を高め、可能であれば「黒字施設への転換」を図っていくことが肝要だ。
とはいえ、全国の体育施設のすべてが黒字運営というわけではない。そこは鈴木部長も注意を促している点だ。
「もともと公共の体育施設というのは行政負担によって成り立っているものです。例えば、市営プールが1時間400円といった安価な利用料になっているのも『人々の健康増進につながる』という考えにのっとっているから。
五輪・パラの施設であろうとも、それは変わりません。海の森水上競技場の場合も、戸田漕艇場や長良川国際レガッタコースより使用料金を引き上げたいと思っても、公共施設という観点を踏まえるとそれほど高額には設定できません。赤字にならない運営努力はしますけど、やはり限界はある。公共の体育施設ということは理解していただきたい点です」(鈴木部長)
東京五輪のレガシーを残すために
こういった特殊性や難しさはあるものの、新たに整備した施設は大勢の人が集まる場所になってこそ価値があるし、後利用がうまくいったと言える状況になる。東京都が作った五輪・パラ会場は年間維持費がかかるだけでなく、巨額の建設費も投じられていることも忘れてはいけない。
前出の海の森水上競技場であれば総工費は308億円。2011年の東日本大震災による建設コスト増が、整備金額跳ね上がりの大きな原因だというが、国内屈指の高価なスポーツ施設というのは紛れもない事実だ。その巨額投資に見合った価値を都民に示せなければ、「負の遺産」と揶揄される恐れも否定できない。
「オールジャパンで一丸となって成功に全力を尽くしたい」と安倍首相は冒頭の1年前報告会で強調したが、真の成功とは大会期間中だけでなく、大会後に「負の遺産」を1つも残さないことも含まれている。
1年後の世界的スポーツイベントが迫ってきた今のうちから、東京都と指定管理者が一体化して、今後の展望をより密に描いていくことが重要だ。
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