植草:パラサイトと言えば、私は業界に入って間もない頃、山田先生の『パラサイト社会のゆくえ』などパラサイトに関する書籍を読んで衝撃を受けたのですが、現在のパラサイト問題はさらに深刻になっています。50歳を過ぎても親御さんが出てくる。
話がまとまりそうなときに、80代の母親が「その女性は家事どのくらいできるの? 働いていて家事をする時間はあるの?」と言い出してくるのです。母親としては息子には家事はさせないことが前提なんです。
女性が「働いていてもできます」というと「反抗的だ」と言うし、さらに、その女性の母親が再婚していることが気に入らないと破談にしてきた。昔ながらの固定観念を、息子や娘に託して結果的に結婚の邪魔をするんです。
山田:それは息子を不幸にしていますね。息子は反抗しないんですか。
植草:反抗せず「母親がだめと言うのでやめます」と従っていました。その方は収入も学歴も高いのにもったいない。
本人の意思ではなく、親の意思で結婚
山田:妻よりも母親を選んだということですね。親御さんには何を言っても変わりませんから仕方がない。本人がそれで幸せならいいですが……。パラサイトを容認する親の心理は、「子どもが1人で苦労して生活するのを見るのはかわいそうだから一緒に住む」。でも、それが本人にとっていいこととは限らない。
植草:親と一緒に相談所に来る人は、男性も女性も本当に多く、だいたいそこで親子げんかが始まります。先日は娘さんと父親が2時間くらいけんか。総じて、女性は父親にも母親にも強い。それでも親と一緒じゃないと来られないんです、不思議と。
山田:「仕方なく親に連れてこられた」というスタンスをとりたいんでしょうね。見栄です。
植草:先に親御さんが1人で来るケースもあります。
山田:親が子どもに代わってお見合いするパーティーがあるくらいですもんね。
植草:そうですね。そこに本人の意見は入らない。でも残念ながら親同士が話して結婚するケースは少ないのが現状です。
山田:でも親の満足度は高いんですよ。自分の息子、娘の自慢話ができるから。欧米では、成人したら男性でも女性でも親元を放り出されて一人暮らしを始めます。だから経済的にパートナーを見つけて一緒に暮らさないと生活できない。日本も成人したら、子どもを手放すようにすれば結婚は増える方に変わると思いますよ。
(構成:安楽由紀子)
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