農協がいま、投資信託の販売に本気になるわけ ベテラン証券マンと挑む一大プロジェクト
松澤さんらは、全国各地のJAで投信の販売を担当するJA職員のOJT教育を担う。3人1組でチームを組み、3カ月ごとに全国各地のJAを指導して回る。いわば投信販売員の“養成請負人”だ。
農林中金は松澤さんのようなベテランを60歳までは出向者として受け入れ、それ以降は彼らを直接雇用に切り替える。現在36人が活動しており、今年10月には総勢45人に増える。
「貯蓄から投資へ」はなぜ根づかないのか
神奈川、島根、長野と全国各地を回ってきた松澤さんの表情は満足げだ。「証券会社時代は次々と新しい投信をつくり、それを販売するために前の投信を売却する短期売買、商品ありきの販売が多かった。JAバンクの考え方はその逆で、顧客のニーズを捉えて商品を提案する。今までできなかった理想の仕事ができている」と話す。
松澤さんは現在59歳。証券会社時代はリテール営業に長らく携わり、支店長を務めたこともある。それゆえに証券会社の文化や行動パターンを熟知している。「貯蓄から投資へ」というスローガンが長らく掲げられてきたが、日本で投資文化がなかなか根づかないのはなぜか。
【2019年8月7日12時38分追記】初出時の記事における、松澤さんの所属会社に関する記述を上記のように修正いたします。
松澤さんは「証券会社では高い目標が必達で、それを売り切る文化があった」と振り返る。株式であれば、日計り(ひばかり)といって、その日のうちに決済するのが美徳で、顧客にとっていい金融商品でも、益出しのためにその日のうちに売却してしまう。
そこには長い時間をかけて顧客の資産を増やしていく発想はない。松澤さんは「JAは必達目標がないことが足かせになっている部分はあるが、(資産形成は)『急がば回れ』だ」と話す。
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