要は来年11月の大統領選挙を控えて、与野党ともに財政問題で足をとらわれたくない、ということのようだ。連日、トランプ大統領と大喧嘩しながらこんな与野党合意をまとめてしまうのだから、ペロシさんはたいした寝業師と言える。「アメリカの二階幹事長」と言ったら怒られるだろうか?
それでも利下げが必要になるのはなぜだろう。ひとつは海外要因である。世界経済の前途に不透明性が広がり、特に米中通商摩擦が影を落としている。7月に改定されたIMFの世界経済見通しは、2019年の世界経済の成長率を3.2%と前回4月から0.1%下方修正した。
その一方で、世界貿易量の伸びは2.5%へと0.9%も引き下げている。それだけ貿易戦争を警戒しているわけだ。実際に今週、上海で再開された米中通商協議も成果なく終わり、トランプ大統領は「残り3000億ドルの対中輸入品も関税10%だ!」と吠えている。世界経済のリスクは確実に増大している。
もう1点は米国の国内経済で、失業率が1年以上も4%を下回っているというのに物価目標2%は一度も達成されていない。つまり景気に過熱感がない。このままでは日本のような低インフレ状態に陥るかもしれない。そうなってしまうと、今度は抜け出すのが大変だ。そこで今のうちに「予防的」利下げが必要だという説明である。
繰り返すが、米連銀がゼロ金利を脱したのは2015年12月のこと。それから3年半の間に、政策金利はようやく2.25~2.50%に到達した。ところが10年物国債の利回りは2.0%前後であり、長短金利差は逆転している。「これほどの利上げは時期尚早であるぞ」と市場のご託宣が下ったような形である。長短金利の逆転現象を解消するためには、年内に利下げがあと1回は必要だろう。となると、次に利上げが行われるのはかなり先のタイミングということになる。
グローバル金融緩和はどこまで行ってしまうのか?
ところで英エコノミスト誌には、巻末にEconomic & financial indicatorsというページがある。ここには各国の10年物国債の金利が並んでいるのだが、最新号を見ると世界各国の低金利ぶりには唖然とさせられる。英国が0.8%、豪州が1.3%、アメリカが2.0%、中国でさえ3.0%である。いや、もちろんロシアの7.3%やトルコの16.4%などの高金利通貨は残っているのだが、今やあのギリシャでさえ10年物金利が2.0%なのである。
そうかと思えば、マイナス金利の国が10カ国もある。日本は▲0.2%だが、デンマーク▲0.3%、ドイツの▲0.4%、スイスの▲0.6%など、もっと低い国だってある。もはやゼロ金利やマイナス金利は、めずらしいことではなくなっている。
それくらい世界経済全体が「日本化」してしまったということだろうか。つくづくわれわれは、過去の常識が通用しない経済に生きている。今回のグローバル金融緩和は、果たしてどこまで行ってしまうのだろうか?(本編はここで終了です。次ページからは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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