日本の政治報道は、なぜこうも甘くなったのか 東京新聞・望月記者問題に見る報道事変

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7月24日、東京2020オリンピック1年前セレモニーにて登壇した安倍首相(写真:ロイター)
指名権を盾に指名を後回しにして、公務を理由に質問を制限、意に沿わない質問には「問題行為」のレッテルを張る──。官房長官会見で「きちんとした回答」を求める東京新聞社会部、望月衣塑子記者への官邸の対応だ。日本が「あそこで何とかできなかったか」と後悔したのが満州事変。望月記者をめぐる問題が事変でなければいいのだが。
報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』(朝日新書)を書いた新聞労連中央執行委員長(元朝日新聞政治部記者) 南彰氏に聞いた。

野田内閣時に「ぶら下がり」がなくなった

──首相への取材機会が少ない。

旧首相官邸は記者が執務室の前まで行け、面会者もわかったし、移動中の首相をつかまえて話も聞けた。新官邸では警備上の理由からそれができず、当時の小泉純一郎首相は1日2回のいわゆるぶら下がり取材に応じました。テレビを入れ、国民に語りかけるという印象を作ったが、後任には荷が重かった。

──ぶら下がりが必要と言うのは鳩山由紀夫さんくらいですね。

彼はサービス精神が旺盛で、同じ質問に同じ言い回しで答えると記者に悪いと思って、言い回しを変えたら「発言がぶれる」と命取りになった。「ぶら下がりは危ない」と認識され、縮小へ。東日本大震災への対応を理由に中断していたぶら下がりを正式にやめたのが野田佳彦内閣。

私は当時朝日新聞の官房長官番で、首相の説明機会が失われていいのかといった議論をしたが、押し切られた。「あんなことしているのは日本だけ」と官邸に助言したのが、すでに有力政治家とパイプを持つ歴代政治部記者。知る権利の縮小を手助けしたのです。

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