日本の政治報道は、なぜこうも甘くなったのか 東京新聞・望月記者問題に見る報道事変

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各社の編集幹部が、これまでと同じでは権力と戦えないし現場が病んでしまうことに気づいて、評価基準を含めて考え方を変えなくてはいけない。労働組合は、変えようとする記者を守るセーフティーネットを張る必要がある。

──伊藤詩織さんの告発会見を見ると政治部だけの問題ではない。

安倍晋三首相の元番記者による準強姦容疑の逮捕状未執行に関する会見を、既存メディアはほぼ報道せず、不信感を招いた。推定無罪の原則はあっても、司法機関、捜査機関の独立性が保たれているか怪しい時期なのだから、捜査が適切に行われたか、官邸からの指示はなかったかを取材し、結果を国民に示す必要がある。官邸にも、警視庁にも記者はいっぱいいるのにできていない。官房長官会見でこの件を聞いたのは望月さんが初めて。国家公安委員会委員長の会見では誰も聞かなかった。国民が持つ不満は、聞ける立場にいるのになぜ聞かない、だと思います。

同調圧力に屈しにくい業界にしたい

──会見とオフレコのバランスにも言及していますね。

政治記者なのでオフレコの重要性は否定しませんが、今は取材過程が可視化されているので、読者や視聴者に会見の場で記者がどういう役割を果たしているのかを見せるのが大切です。「重要なのはオフレコで、会見は単なる儀式なんですよ」では通じません。まずはオフィシャルな場所で説明させて、さらに各社の追加取材というように改める必要があると思います。

以前と違い、オフレコの扱い方が気に入らないと、取材先側がSNSで「誤報!」と攻撃してくるリスクがあります。自衛のためにもオンレコ領域を広げるべきです。

『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』(朝日新書)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

──産別労組の長としてあと1年、どう引っ張っていきますか。

本書に書いた内容は執行部で議論をしてきた内容ですが、現場での実行が課題です。ただ、望月さんへの質問妨害に対し全体で守るという態勢はできたし、次期中央執行委員は女性がゼロから10人程度になるなど、変化しています。「多様性」を確保し、同調圧力に屈しにくい業界にしていきたいと思います。

──最大のシンパ、知的階層は新聞の消費税軽減税率適用で、結局政治と手を握っているとみています。

知識への課税は最小限に、と主張しながら、新聞の宅配のみの適用で満足している状況はよくない。原理原則の問題。10月以降の業界への風当たりを懸念しています。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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