日本人が知らない「コーヒー」生産農家の悲哀 零細農家は撤退か麻薬栽培かを迫られている

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コロンビアで「カフェ・フォー・チェンジ」という組織を設立してコーヒー豆の価格の正常化を主張しているフェルナンド・モラレス氏は、「1983年にコーヒー豆の国際協定を結んだときに比べ、現在の価格は当時の4分の1まで減少している」と指摘。「この協定を守るために本来は1ポンド=3.6ドルになるべきだ」と主張している。

メキシコやグアテマラ、ホンジュラスなど中南米では1300万世帯がコーヒー豆の生産に従事しているが、ブラジルを除いた生産量が小規模の国同士が集まっても世界の相場に影響を及ぼすことはほぼ不可能だろう。

息子は農園をやめてアメリカへ移民

価格下落の影響を受けて中南米の生産者はさまざまな決断を迫られている。テレスールの報道によると、例えば、ホンジュラスのアントニオ・マルティネスさんの農園では、生産量はかつての3分の1まで減少。肥料を購入する資金もなく、今後生産を続けることが困難な状態にあるという。

また、中米ではエルニーニョ現象から長期の干ばつとさび病の被害を受けてコーヒー豆の生産を放棄する農家も出ている。マルティネスさんの息子は、コーヒー豆の栽培を放棄して1年前に家族とアメリカへ向かったという。コーヒー豆の生産では生計が立たないというのが理由だが、かといって現在アメリカは移民受け入れを厳しくしており、一家の先行きには不透明感が漂う。

一方、コロンビアのコーヒー豆の生産地はその景観がユネスコの世界遺産に登録されているが、最大の生産地ウイラ県では多くの生産農家が破綻状態にあるという。生産をやめてその土地を売却するのか、あるいは違法なコカの栽培に従事するのか選択を迫られている。これまで銀行から受けた融資の返済ができない状態にあるのだ。

同じくアンティオキア県でも危機は深刻で、コーヒーの栽培が盛んなサントゥアリオ市のエベラルド・オチョア市長は「これまでゲリラ組織による脅威でここを去っていった人たちがいたが、コーヒー価格の下落で、またここを離れる人たちが目立つようになっている」と語っている。

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