日本人が知らない「コーヒー」生産農家の悲哀 零細農家は撤退か麻薬栽培かを迫られている

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特にコロンビアの場合は、15年前までゲリラ組織によってコーヒーの生産業者は脅迫され、例えば2000人が住んでいたある町では、ゲリラ組織による紛争の影響でコーヒーの栽培に従事する人がいなくなったという事態も起きた。その後、平和を取り戻したかと思った途端、今度はコーヒー豆の価格の下落から栽培維持が困難となり、コカの栽培に違法でも従事することの誘惑が生産業者の前につねにちらついているのである。

サントゥアリオ市に住むグスタボ・エチェバリアさんは、自身の農園をホテル建設のために売却した。一方、ディエゴ・エオナさんは1993年の価格危機のときにアメリカに移民してアメリカ国籍を取得。そして今、帰国してコーヒー豆の栽培に従事しているというが、閑期になるとアメリカへ出稼ぎに。そこで得た資金をコーヒー豆の栽培に投資している状態だ。

国連の「ベター・ザン・キャッシュ・アライアンス」の調べによると、コロンビアのコーヒー豆の生産業者の96%は零細規模で、54万世帯がその栽培で生計を立てている。

政府も救済策を打ち出しているが

スペインのエル・パイス紙によると、コロンビア政府は7月に入って、生産による損失額の最高70%を補填する基金の創設を決めた。また、4月にはコーヒー生産者連合会が600億ペソ(20億円)を同じ趣旨で救援資金として用意した。しかし、生産農家はそれでは損失を補填するには不十分だとしているほか、資金がいつ農家に提供されるのか不明だという不満を表明している。

アンドレス・バレンシア農業相もコーヒー生産農家が農業銀行に抱えている負債を点検して、厳しい状況に置かれている農家に対し別の形での支払い方法を検討することを表明した。同相によると、農業銀行がこの分野で抱えている負債総額は1兆2000億ペソ(400億円)という巨額にのぼるという。

スペインのEFE通信によると、コーヒーはコロンビアの重要な輸出品目であり、政府としては看過するわけにはいかない。同時に生産農家が違法を承知しながらコカの栽培に移行することは麻薬問題に苦慮してきた政府としては何があっても避けたい話だ。

日々コーヒーを楽しんでいる日本人にとって遠い中南米の話はピンとこないかもしれないし、零細農家の苦労しているのは私たちのせいではないかもしれない。だが、何気なく摂取している食品の陰には、こうした悲哀があることに思いをめぐらせることぐらいはしてもいいのではないのだろうか。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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