LINEとメルカリの赤字に漂うQR決済の不透明感 参入障壁も低く、中国とは普及の背景が違う
キャンペーンには顧客獲得とともに加盟店増を狙う意図もあるため、いずれは競争も落ち着くだろう。ここまで多くの参入、顧客獲得キャンペーンへの投資が過熱している理由は、10月1日の消費増税に合わせて始まる「キャッシュレス・消費者還元事業」だ。2020年6月までの9カ月間、店舗の種類により5%、あるいは2%のポイント還元が、消費増税による消費低迷の緩和を狙って実施される。
対象となるのはクレジットカード、デビットカード、非接触ICカード、それにQRコードなどのスマホ決済だ。参入が比較的容易なQRコード決済に群がるのは、政府がキャッシュレス推進協議会を通じて主導する、キャッシュレス社会実現に向けた動きに反応したものと言える。
この国を挙げたキャンペーンを通じ、キャッシュレス取引が社会に定着したときに「実際に使ってもらえる決済サービス」になっているための顧客獲得キャンペーンといえる。
QRコード決済が普及した中国との違い
しかしQRコード決済が中国で普及した背景には、少額決済のインフラが整備されていなかったことがある。日本の場合、すでにFeliCaを用いた非接触ICカード決済の端末が普及している。初期コストも下がってきていることから、QRコード決済の比率が中国のように激増するとは考えにくい。
各社の投資は消費者還元事業が続く2020年6月まで続くだろう。しかし、QRコード決済はアプリ一つで簡単に使い始めることができるものの、乗り換えの障壁もほとんどない。獲得した顧客が定着するかは、LINEならば通話・チャットサービス、メルカリならばフリーマーケットサービスとの連動性など、本業側をどのように生かすかの提案性に依存する。
身を切って獲得した顧客が将来の収益を本当に生み出すのか。「○○ペイ」の先にある収益モデルについて、各社はそろそろ具体的な形で投資家に説明すべきときだ。
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