近年、育休復帰後の配置転換がパタハラに当たるのではないかと、SNS上で取り上げられることがあります。これは、ケースバイケースで慎重に考える必要があるでしょう。
日本型雇用システムにおいては、主に人材育成を目的とした配置転換は、企業規模が大きいほど一般に行われており、使用者には人事権の行使として配転権限が認められています。
ただし、転居を伴う転勤は、社員の生活関係に少なからぬ影響を与えることから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されていません。業務上の必要性があるか、人選の合理性があるか、手続きの妥当性や労務管理上の配慮はあるか、命令権の濫用を判断する際の基準となります。
重要なのは日々のコミュニケーション
労働者の異動で就業場所が変わる場合には、子の養育や家族の介護が困難とならないよう、その状況について配慮することが義務付けられています(育児・介護休業法第26条)。配慮の内容としては、その労働者の育児・介護の状況を把握することや、本人の意向を斟酌(しんしゃく)すること、就業場所が変わる際の代替手段の有無を確認することなどが挙げられます。
育休復帰後の配置転換がすべて問題となるわけではありません。こうした配慮もなく、まして育休を取ったことによる報復措置のような形で不利益取り扱いをすることは当然禁じられています。
大切なのは、配慮足りうる状況を本人がうまく伝えられるようにするため、日頃から職場で円滑なコミュニケーションができる環境にしておくことです。上司・管理職の対応は、大きなカギを握ります。そのためには、企業がイクボス(部下や同僚等の育児や介護・ワークライフバランスなどに配慮・理解のある上司の意)を増やすべく、管理職の意識改革を図ることは重要といえるでしょう。
2018年に「イクメン企業アワード」両立支援部門でグランプリを受賞した日本ユニシスでは、性別にかかわらず利用できるワークライフバランス制度を整え、男性社員による活用も進んでいるといいます。
男性社員を対象とした社内SNS「育児を楽しむパパネット」の運用をはじめ、夫婦や男性社員を対象とする育休復職者向けのワークショップの開催、イクボスを育成するための管理職研修など、さまざまな取り組みを通じて、育児を積極的に行う男性社員を支援しています。
パタハラに限らず、あらゆるハラスメントを許さない職場とするために、経営トップが明確なメッセージを打ち出し、管理職の理解を促すことが今後よりいっそう求められます。
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