離婚をすると「夫婦の年金」はどうなるのか? 本当に「年金分割制度」を知っていますか

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そして問題のCさん夫婦ですが、婚姻期間はわずか12年です。結果、この期間に該当する厚生年金の受給額は39万4632円にしかなりません。したがってCさん妻の年間受給額は、19万7316円です。

年間19万7316円ということは、月の受給額は1万6443円です。専業主婦の生活が困窮するのを避けるために設けられた年金分割という制度も、月の受給額が1万6443円ではほとんど無意味といっても過言ではないでしょう。

ちなみに、妻が65歳から90歳までに受け取れる年金分割後の受給総額は、以下のようになります。

Aさん妻 1438万7625円
Bさん妻 1233万2250円
Cさん妻   493万2900円

この比較でも、Cさん妻がいかに不利であるかがわかります。離婚しなければ、Cさんが65歳から90歳までに受給できる年金額は、厚生年金部分だけで3125万円にもなります。しかも、結婚生活を続けていれば受け取れる加給年金も、離婚すると受給できなくなります。

年金は最低限「自分でつくるもの」

もし、どうしても離婚したいのであれば、Cさん妻に残された道は外に出て働き、自分の老後資金をつくることです。まだ現時点で35歳なのですから、十分に可能です。

前回の記事(「『同期入社で同じ年収』なのに年金額が違う理由」)でも触れましたが、今後も「夫だけが稼いで、妻が専業主婦であり続ける」というのはますます希有なケースに近い話になりそうです。

年金のことを考えるなら、妻が正社員として働きに出ることがいちばんです。正社員として、健康保険の被保険者になれば、傷病手当金も付きます。厚生年金への加入によって、65歳以降の老齢厚生年金も加算されていきます。仮に45歳で正社員採用され、平均年収300万円で60歳まで15年間、厚生年金に加入したことによる老齢厚生年金の加算額は、約25万円です。今後、給与が増えたり勤続年数が延びたりすれば、さらに年金額が増えていきます。

このように、年金はもらうものではなく、つくるものです。「もらうもの」と思えば、扶養のまま保険料を払わずにもらったほうが得だと考えてしまいがちですが、「つくる」となると考え方が変わります。年金は、自分が働くことで増やすことができるのです。

今のところ、会社員の扶養の妻は、税金も社会保険も優遇されています。しかし、主に育児や介護などの事情で働きづらい環境にいる人のために設けられている仕組みであり、最低保障にすぎません。夫の面倒を最後まで見るにせよ、離婚するにせよ、働ける環境にあるのならば、夫の扶養からさっさと抜け出して、働けるだけ働くことをお勧めします。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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