「A4雌牛」の焼肉チェーンがじわじわ伸びたワケ うたい文句は「コスパ日本一の焼き肉専門店」

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そしてもう1つ、気になるのが「A4雌牛」のこだわりだ。なぜ、最高級A5でなくあえてA4なのか。

「品質を評価する中で重要な視点がサシ(脂肪)の量と質です。A5ランクは焼き肉に向かない、というのが私の考えです。つまりしゃぶしゃぶなどと違い、焼き肉は肉を豪快に、たくさん食べてもらう料理ですよね。脂肪が多いと、胸がいっぱいになり量が食べられない」(豊島氏)

そして、面白いのが雌牛を選んだ理由だ。

「詳しい人の間では共通認識となっていますが、雌のほうがおいしいんです。味が繊細でライト。雄はたくさん食べると、翌日胃にもたれたりしますね。人間も、女性のほうが男性よりやわらかいでしょう。それと同じだと思います」(豊島氏)

特選和牛の握り390円と特選和牛の軍艦490円。肉だけでなくフードメニューもバリエーションが豊か(筆者撮影)

ただしそもそも市場には雌は1割程度しか出回らない。子牛を産むため、貴重だからだ。しかも、子どもを産んだ経産牛はA4以上にならないので、A4の雌牛はさらに希少となる。

それほど貴重な肉だと思うと、さらにおいしそうに思えてこないだろうか。実はこれも、豊島氏の狙いとしているところ。

人が食べているのは料理だけではない

「人は情報を食べているんです。しかも焼き肉は調理法がシンプルなだけに差別化が難しく、商品の情報が味を大きく左右するジャンルです。今は赤身の肉がもてはやされていますが、これも情報合戦だと思いますね。目をつぶって食べたら、カルビがいちばんおいしいと感じる人が多いのではないでしょうか」(豊島氏)

情報の重要性をかみしめたのが、オープン直後のことだ。

「オープンすぐは集客が厳しかったのですが、1年経つかどうか、というところで、グルメサイトで名の売れているレビュアーが何人か来てくれたのをきっかけに、増えていきました。それ以後は集客に苦労しなくなりました」(豊島氏)

ただし一度落ち込んだ時期があるという。

「6店舗目をオープンしたあたりからですね。今思うと、これは『チェーン店だ』と思われて、希少性が薄れ始めたのだと思います。ここからの立ち上がりに苦労しました。だいたい10店舗を超えると、ブランディングが定着し、消費者も安心するようです。

ただ、焼き肉でチェーン店は難しいと考えています。とくに、USHIHACHIが属しているミドルコストゾーンで、知られているチェーンは少ないでしょう。100店舗が限界だと思っているので、USHIHACHIは5年で88店舗という目標を立てています。ただそうなると、希少価値の高い雌牛の供給が課題となってくるため、コンセプトをシフトするか、あるいは自社で肥育するか、何らかの手段を検討する必要があります」(豊島氏)

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