女性の貧血を「自己責任」と切り捨てる人の盲点 日本では健康な女性でも2割以上が対象に
私は、これだけ多くの人に関係する疾患なのに、そのもたらす問題が十分知られているとは言いがたい貧血について多くの人に知ってもらおうと、本や記事を執筆したり、講演をしたりしています。
では、そもそも貧血の何が問題なのでしょうか。
貧血と一口に言っても、実はさまざまな種類があるんです。日本で多いのは、鉄欠乏性貧血。体内の鉄が不足して起こるものです。
鉄は体内で、酸素を運ぶ役目を担っています。つまり、鉄が不足することによって酸欠状態が起こるんです。酸素がないと人間は生きていけませんから、こう考えると貧血が一般的にイメージされるより重大な問題だとわかると思います。
脳が酸素不足になれば目まいや立ちくらみ、心臓の筋肉であれば狭心症。骨格筋では疲れやすさや倦怠感などにつながります。
不足した酸素を補うために体が呼吸数を増やしたり心拍数を増やしたりした結果、動機、息切れ、頻脈などの症状につながるケースもあります。
また、妊婦さんが貧血になった場合、早産や低出生体重児となるリスクが上昇するという報告もなされています。
鉄を摂取できるのに貧血になるのは自己責任?
とはいえ、鉄分をたっぷり含んだ食品の購入が難しい発展途上国とは違い、私たちは買おうと思えば鉄分を含む赤身のお肉やお魚、ひじきなどの海藻を購入することもでき、基本的には厚生労働省の示す摂取基準量の鉄を取ることは可能です。
それなのに、調査によっては女性の2割以上が貧血となっている。取ろうと思えば取れる環境で、鉄不足から貧血になるのは自己責任なのでしょうか。
若い女性の場合、ダイエットとの関係性は無視できません。過度な食事制限や偏った食事による貧血というのは、世界的にも問題となっています。
このダイエット自体、個人がしたいからしていると思われがちですが、そもそもそれをあおる記事であったり広告であったりというのが世の中にはあふれています。
2017年、フランスでは痩せすぎたモデルの起用を禁じる法律が施行されました。若い世代に広がる痩せ願望が、摂食障害につながっていることに危機感を抱いたためです。
一方、日本ではダイエットを煽る記事や広告に特段の規制はありません。