仕事が嫌な時「逃げていい人」「ダメな人」の境界 「逃げるは恥かつ役に立たない」場合もある
そして、そこにやってきたのが広告会社のクリエーター・M氏だ。彼は笑顔を浮かべながらこう言った。
「中川さん、もうすぐオープン楽しみですね。さぁ、上に行きましょう。もう営業は先に打ち合わせを始めていますので」
前日の社内(広告会社内)打ち合わせでは、まったく不安はなかったのだが、いざクライアントを目の前にしたら不安が押し寄せてきてしまった。いや、恐怖と言ってもいいかもしれない。ここからの展開はあまりにも私が情けなさすぎて恥ずかしいのだが、再現してみる。
こうなって、私はなぜか泣いてしまったのである。完全にアホである。お前はそれでもプロか?という話なのだが、こんな無能な私に優しく笑顔で接してくれるM氏を前にしたら駄々っ子になってしまった。M氏は一瞬考えた後、こう言った。
「わかりました、資料はもう営業が持っていますし、昨日の打ち合わせで話した内容は営業もわかっているので、彼に説明してもらいましょう。取りあえず、僕らはビール飲みに行きましょう」
そう言って、2人して近くのデニーズに行き、朝っぱらからビールをガンガン飲んだ途端に気が大きくなり「ワシだったらできますよね!」「はいはい、大丈夫ですよ(笑)」みたいな話になった。
あのとき、逃げていたらどうなったか
あのまま彼が「ビール飲みに行きましょう」と言わずに「絶対に上に行きます」と言っていた場合、多分私は走って逃げていたと思う。
そしてその後は布団の中で「オレには無理だ、オレには無理だ」と言っていたかもしれない。そして一切の電話に出なくなり、プロジェクトはできる人間でなんとか遂行するという形になっていたかもしれない。大切なサイトオープンの日に関わっていないと、もはやその後の3カ月間、関わるのは気まずいだろう。
最悪の場合、私とその広告会社の関係も悪化し、仕事を発注してもらえなくなったかもしれない。そう考えると、あのときのビールのオファーが救ってくれたし、酒を飲んで気持ちが大きくなったことで逃げずに済んだ。
「逃げてもいいんだよ」は安易に考えないほうがいい。ある程度「逃げても自分の信用は落ちない」とわかっているときに発動させる最後の手の1つとして、本当にヤバいときのために取っておいたほうがいい。
ただし、大事なことなので何度でも繰り返すが、パワハラやうつ病の場合は、自殺につながってしまうこともあるため、逃げることを躊躇しないでほしい。
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