仕事が嫌な時「逃げていい人」「ダメな人」の境界 「逃げるは恥かつ役に立たない」場合もある

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このキャリアを見てもわかるように、とにかく世の中の常識が通用せず、独自路線を突き進むエキセントリックな男なのだが、Kが作るCMや広告を見たかったな、という気持ちがある。

彼からしたら「もう、名古屋、イヤだったんですよ。あと、会社もなんか自分には合わなかったと思います。結局、その後博報堂とも仕事してるじゃないですか。全然後悔していませんよ」と笑って言い放つだろうが、はたして常人が「逃げた」結果、「エリート広告代理店マン→無職→フリーの編集者」となった場合、「あのとき逃げなければ……」と考える割合は案外多いのでは。

「逃げる」については、「会社」だけでなく「仕事」からも逃げることがある。その場合、余人をもって代えがたい人、十分な実績を持った人であれば、「よっぽどの事情があったんだろうね」ということで、セカンドチャンスをもらうことは可能だろう。

だが、代わりがいる場合、またはそれほどの実績がない場合、そしてよっぽどの人間関係が構築されていない場合は各所で「出禁」となる。信用復活までには相当な時間がかかってしまうことだろう。

仕事から逃げようとした筆者

私も一度だけ、仕事から逃げようとしたことがある。以前、とある企業のオウンドメディアの編集を担当することとなったのだが、毎日更新する記事の本数や取材の大変さに押しつぶされそうになってしまった。

この段階で、ウェブメディアの編集を開始して6年の経験があったため、「オレならできるに決まっている」と思っていた。さらにその2年前にもオウンドメディアは作った経験があるので、余裕でできると過信していた。

しかし、このときは動画もつけたり、記事本数も前回よりも格段に多かったり権利関係のクリアなど、とにかくやることが多すぎた。サイトオープン直前に企業・A社との打ち合わせで進捗を報告しなくてはいけなかったのだが、打ち合わせの時刻が迫るにつれ、不安だらけになってしまった。

はたしてA社は今日報告する内容で満足してくれるだろうか……。そもそも、これからの3カ月(商品の重点販売期間)、毎日更新することができるだろうか……。原稿を発注するライターの皆はキチンと言ったとおりに動いてくれて、納品してくれるだろうか……。あるいは今担当している3つのウェブメディアの編集(つまり私の本業)は、その間滞りなくできるだろうか……。とにかく不安だらけになってしまった。

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