かんぽ生命の不正問題は一体誰の責任なのか この事件は現場を処分すれば済む話じゃない
もうひとつ怖いところは、20代の頃にそうやってだまされた私の家内のような消費者が、その不利益に苦しむことになるのはその50年後の遠い将来だということです。少なくともうちの家内はまだ50代なのでこの当時に受けた不利益はまだ表面化していない。70代ないしは80代になってはじめて契約の差が表面化する。この「本当の被害はずっと先だ」という時限爆弾がもうひとつの大問題です。
責任を取らされるのは関係のない次世代社員
今回の不祥事を受けて「生保業界ではもう10年以上前にそういった営業はやめている」「かんぽ生命が業界の評判を下げるのは生保業界にとって困ったことだ」という他社からの冷めた論調が報道の合間に垣間見えます。
しかし生保業界の人に思い出していただきたいのは、生命保険は超長期金融商品だということです。30年前にたくさんの消費者をだまして不利益な切り替えを推進した利益は、そのまま過去30年間、会社の利益や職員の手当を増やしたことでしょう。しかし契約者のデメリットが表面化するのはこれから先の未来であって、契約者にとっては過去に業界が引き起こした問題はまだ始まっていないのです。
契約者をだませば職員も幹部も儲かる。しかしその被害はだました世代が引退した後になって表面化する。これが生保業界が販売する商品の宿命です。
かんぽ生命は不正の被害者一人ひとりの契約を確認し、不利益が判明した場合、契約を元に戻すことを表明しています。実際にそれが行われるかどうかについては消費者が厳しく監視をすることが必要だとは思いますが、企業の姿勢としては一定の評価ができます。
逆に言えばそれくらいの対応ができない組織には、50年にわたる契約者の人生に寄り添う生命保険会社としての仕事を任せるのは適切ではないと思います。あくまで私見ではありますが、ここできちんと責任ある対応を見せれば、かんぽ生命のほうが1990年代に予定利率の切り替え契約を推進した大手生命保険会社よりも社会責任を果たす会社であることが証明できる。私はそう考えて日本郵政グループの対応を見守っています。
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