かんぽ生命の不正問題は一体誰の責任なのか

この事件は現場を処分すれば済む話じゃない

つまりまとめると、グローバルな経営原則としてコンプライアンスの観点から捉えれば、かんぽ生命の問題では日本郵政グループ全体で、経営陣の責任と、今回のようなインセンティブを設計した責任者が処分されるべきだというのが経営実務論的な考え方なのです。本部が責任をとらなければ問題は解決しない。これがこの事件の本質です。

さて、今回の事件で実は私はもうひとつ気になったことがあります。かんぽ生命が起こした不祥事について、生保業界から冷ややかな視線が送られていることです。「あのような遅れた営業スタイルはもう何年も前に業界からはなくなっている」「かんぽ生命の不祥事で、ほかの生命保険会社まで同じようなことをしているように見られるのは不満だ」という声です。私はこれはちょっと違うのではないかと思うのです。

25年前に起こった契約切り替え事件

実は25年前ぐらいにこんなことがありました。個人的な経験です。結婚してすぐのことでした。家内から相談を受けたのですが、職場で新しい生命保険への切り替えを強く勧められているのだけれど切り替えていいかどうか一緒に話を聞いてほしいというのです。それで自宅を訪問した営業の方の話を一緒に聞くことになりました。

営業ツールを見せられながら説明していただいた内容は、新しい保険のほうがいかにメリットがあるのかという説明ばかり。新しいリスクに対して新しい保障を提供してくれるというよい話をたくさん聞きました。それで「いいじゃないか」ということになって契約を乗り換えたのです。このとき少しばかり不安になって「なぜいいことばかりある商品への乗り換えを営業しているですか」と聞いたのですが、営業の方は「保険は長くお客様とおつきあいする商品ですからそれが当然です」とお答えいただきました。

さて、半年ぐらいして週刊誌に生保業界で悪しき契約切り替えが横行して社会問題になっていることが告発されるようになりました。要はバブル崩壊前の高い予定利率の契約は生保会社にとって損失が出るため、低い予定利率の新商品へと切り替えるという、顧客に対する不利益な営業が生保会社の本部の指導で横行しているという話だったのです。

大手生命保険会社と契約していた私の家内もそれに巻き込まれていて、将来戻ってくる返戻金が数百万円の単位で減らされる新しい契約を結ばされていたことが後から判明しました。営業から説明されなかった約款に小さく書いてあったそうです。

この話の怖いところはふたつあって、ひとつは生保会社の本部が本気で契約者をだまそうと思ったら、消費者はまず気づかないということです。今では法律が変わって、当時のように重要事項を説明しないで切り替えをすれば契約無効になると言うかもしれません。しかし高齢者が相手なら今の厳しいルールでも不利な契約変更は簡単にできます。実際、かんぽ生命の不祥事はそれが今でもできることを証明しています。

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