かんぽ生命の不正問題は一体誰の責任なのか

この事件は現場を処分すれば済む話じゃない

その規模が大きくなり、隠しきれなくなって、今回のような大事件に発展したわけです。信頼を失ったかんぽ生命の株価は10%以上下落し、株主は1000億円以上の損害を被りました。

外形的にはかんぽ生命の大半の営業を委託している日本郵便の職員が起こした不祥事ということですが、この問題の責任はいったい誰にあるのか? この記事ではそのことにフォーカスして考えてみたいと思います。

実は今回私がこの記事を書こうと考えた最大のポイントはここにあるのですが、このような問題について法律的な側面と、経営学的な側面とではその理解と解釈が180度異なります。

一般に現場の営業が9万件のレベルで不正を行ったという場合は、弁護士などの法律の専門家の立場では不正を行った当事者の責任がまず重いと考えがちです。

理由は、経営陣は最初から「不正は行ってはならない」ということは職員に告知していますし、適正な契約プロセスがどうあるべきかを職員に明示しているからです。

不正が起きた場合、不正を行ったものはそれが悪いことだと認識しながら不正に手を染めたことになる。ですから経営者の責任としては、

1. もう一度社内ルールをはっきりと明示する
2. 二度と不正が起こらないようにコンプライアンス研修などを実施する
3. 被害者に対しては謝罪、救済および補償を行う
4. 当事者を処分する

といった対応がその軸になります。

少しだけ話題がそれますが、わかりやすいので例として挙げさせていただくと、闇営業が問題になった吉本興業が採った対策がこれで、芸人全員に研修を受けさせるとともに、不適切な営業に参加した芸人を謹慎処分にしたわけです。

おそらく今回の不祥事も、日本郵政グループの中の処分はこのような枠組みで進み、不正な営業行為をした郵便局員がいちばん重い処分を受けることになると私は予想しています。

経営実務論では「経営者」が最も悪い

一方で、経営実務論ではまったく別の捉え方をすることがあります。現場の営業が9万件のレベルで不正を行ったという場合はそのような仕組みを作った側にもっと重い責任があるという考え方です。つまり経営者がいちばん悪く、営業ノルマの仕組みを設計した人がその次に悪いと考えるのです。

日本郵便ではゆうちょ銀行では現場での組織単位のノルマがきつくなる一方で、契約インセンティブを勘定にいれないとやっていけないほど現場の給与が抑えられるような仕組みになっていたといいます。

顧客さえ納得させて同意書にサインしてくれれば(これは高齢の顧客が真に理解してという意味ではありません)、これまでの契約を解約させて、そこから時期をずらして新規契約をとることでノルマが達成できる。そのような仕組みがつくられているから契約者に不利益となる解約や新契約をすすめる現場職員が多数出てきた。それが数人ではなく数万件レベルで起きたという事実をもって、そのような仕組みを設計した側の責任のほうが重い。経営実務論ではそう考えるのです。

次ページアメリカの「不祥事は経営者の責任」という理念
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