「はとバス」を支える運転士のすごすぎるバス愛 欧州製2階建てバスに魅せられ30年

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――はとバスで現在所有するバスは、一般のバスはほぼ国産なのに対して、2階建てバスは、1車種を除いてすべてヨーロッパ製だそうですね。生産国による違いは感じますか。

操作の仕方が、日本とはまったく違います。さらに、ヨーロッパ製のバスは、操作方法を大きく変えることがあると感じます。自分が最初に乗ったドイツ製のバスはミッションが8段でした。次に入ってきたバスはクラッチペダルを踏むだけでギアが変わるようになっていたんです。今は、フルオートマチックではないんですが、クラッチペダルはなくなっています。こういう大きな変化は日本のバスにはあまり見られないと思います。発想が日本と違いますよね。

「2階建てバスは楽しいよ」と技術指導

――社内では、車両の不調について相談されることもあるということですが、そういった知識はどうやって身につけたのですか。

整備の担当者から聞いて勉強しています。故障したときになるべく見に行くようにしていて、そこで部品がどこにあって、その部品がどういう働きをしているのかを覚えていきます。わかってくると、さらに面白くなりますね。

他社のバスが弊社の整備工場に来ることもありますが、外国製のバスが来たら見に行ってしまいます。仕様も少し違っているので、知りたくなるんです。

――バスが好きだからこそ、自然に知識が増えた感じですね。新車が納車されたときは、楽しくて仕方ないのでは。

運転席の様子(撮影:梅谷秀司)

故障もしていないのに、エマージェンシーをいじって調子を悪くして、余計なことをするなと怒られたことがあります。でも、いじりたいものですから。

外国製のバス特有の操作を、整備に聞くことなく、いじくりまわして発見したときは「やったー」って思います。エンジンをかけないと点灯しないライトがあるなど日本とは発想が異なるところがあるんです。わかっていくうちに、どんどん楽しくなります。

――村尾さんは、自社だけでなく、他社に2階建てバスが納車された際にも技術指導を頼まれることがあると聞きました。後輩たちにも頼られている存在のようですが、そうなるために気にかけていることはありますか。

どうなんでしょう。自分も楽しんで乗っていますので、2階建てバスは楽しいから乗ってみなよという感じで接しているだけです。上から教えることはしていません。自分が楽しんで乗っていますので、それでいいのかなと思います。

――ヨーロッパ製の2階建てバスは、はとバスでは2016年に1台、2017年に4台と導入していますが、今後はどうなっていくと感じていますか。

2階建てバスは、昔は多くの会社が所有していましたが、今は少なくなってきました。はとバスのような都内の定期観光であれば通れない場所はあまりないのですが、郊外に行くと狭いトンネルなど通れないところが結構あります。修理の部品も輸入になるので経費が高くつきがちです。そのため、日本でのヨーロッパ製の2階建てバスが、また貴重になってきていると感じています。自分は好きですので、なくなってほしくないです。自分の願望ですけど、たくさん走ってもらいたいなと思います。

村尾さんは、バスの話になるとぱあっと明るい顔になる。母国ヨーロッパで走っているアストロメガは、日本とは基準が違ってサイズが大きい。
「そのバスを運転してみたくありませんか」と聞くと、「したいです。できれば向こうに行って、左ハンドルで」との即答。現実的にはたぶん行くのは無理でしょうと笑う村尾さんだったが、そのとき脳内でバスを運転していたように感じた。心から楽しそうな、いい表情をしていた。
高橋 ホイコ ライター

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たかはし ほいこ / Hoiko Takahashi

1976年生まれ。国民生活センター勤務を経てフリーライターに転身。ウェブメディアを中心に執筆中。企業の一風変わった取り組みへの取材を得意とする。趣味はホルン演奏、ピンクのガジェット収集、交通インフラの豆知識集めなど。トマトマンの斜め上行く生活術管理人。

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