「文系出身者の未来は暗い」と言い切れない理由

人文科学は経済的な意味でも学ぶ意味がある

人文科学を学ぶことの大切さを今一度、見直すべきです(写真:Fast&Slow/PIXTA)  
AI技術の発達などにより、テクノロジー至上主義時代の様相を呈する現代。『センスメイキング』の著書であるクリスチャン・マスビアウ氏によると、「テクノロジーだけでは本質的な問題解決に至らない場合がある」という。なぜなのか。2019年5月29日に立教大学にて行われた、同氏による講演「AI時代におけるAIと人文科学の可能性」の一部を公開する。

物理学は簡単で、社会学は難しい?

「テクノロジーは万能である」という考えが5年ほど前から世界に広がりつつありますが、私は人文科学の価値を今こそ見直すべきだと考えています。その理由をお伝えしましょう。

ニール・ドグラース・タイソンという有名な天体物理学者はこんなことを言っていました。「人間の行動は非線形であり、だからこそ物理学は簡単で、社会学は難しい」と。

物理学などの自然科学の考え方では、物理法則やデータに基づく仮説をもとに推論がなされます。「昔はこうだった。だから未来はこうなる」という具合に、時には非常に確固たる推論を出すこともできるわけです。

ところが、人間の行動や社会の変化など、時にはそのような仮説を立てることができない場合もあります。そうしたときは、今起きていることを観察するしかありません。探究的、探索的な問い、つまり「WHY」を持って答えを洞察するのです。

私が創業したReDアソシエーツでは、人文科学を基盤としながら、こうした洞察を行ってきました。具体的な方法としては、少人数のグループを注意深く観察し、深みのある調査を行って真実を突き止めるという探求をします。このような観察を経ると、時にはテクノロジーだけでは解決できない問題であっても、新たな解決の糸口を見出すことができます。次は、そうした事例を紹介したいと思います。

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