デキる人は一流の思考を本で「追体験」している

「新しい発想」をするための"戦略的読書"

では、どうすれば、自分の頭で考える力を養えるのでしょうか。

僕は、「考える力は、料理方法と同じ」だと解釈しています。料理をするとき、最初はレシピどおりに作ります。作った後に食べてみて、「塩辛いな」と思ったら塩やしょうゆを減らしたりして、味を調整します。

料理のレシピに相当するのが、「発想のパターン」や「考える型」です。発想のパターンや思考の型を学ばなければ、考える力を高めることはできません。

考える力は、ゼロから生まれるものではありません。料理と同じで、考える力の最初のレシピは、先人の考える型、発想のパターンをまねることです。

先人の考える型や発想のパターンを知る1つの方法が、読書です。とくに古典。何十年、何百年と読み継がれてきた古典は、現代人にとっても色あせることはありません。

読書は、世界の賢人や先人が書き残した体験や思考を、文章で追体験することです。

マルティン・ハイデッガー(ドイツの哲学者)の研究で知られる木田元中央大学名誉教授は、「きちんと書かれたテキストを一言一句丁寧に読み込んで、その人の思考のプロセスを追体験することによってしか、思考力は養えない」という趣旨のことを言い切っておられました。

木田先生は若い人を集めて、原書を丁寧に1行1行読んでいく読書会を続けておられましたが、APU(立命館アジア太平洋大学/2018年より筆者が学長を務める)でも木田先生と同じように、ハイデッガーを一言一句読み込む特別講義を実施している教員がいます。

読書の本当の目的が考える力を鍛えることだとしたら、アリストテレス、デカルト、カントといった超一流の頭脳の思考のプロセスを追体験することが、学びになるはずです。

大学生の読書量が少ないのは、企業と大学に原因がある

波頭亮さん(経営コンサルタント)は、伊藤穰一さん(マサチューセッツ工科大学教授、MITメディアラボ所長)との対談の中で、

「大学卒業までに読むテキストの量の日米比較で、米国の大学生は4年間で400冊読むのに対して、日本の大学生はわずか40冊しか読んでいないということらしいです」(参照:「結局、日本人は努力の総量が足りない」東洋経済オンライン2013年8月18日)

と指摘しています。

日本の大学生は、あまり読書をしません。APUの学生の読書量は多いほうだと思いますが、確かに、日本人学生よりも国際学生(留学生)のほうがよく本を読んでいます。

どうして日本の大学生は、本を読まないのでしょうか。大学生の読書量が少ないのは学生側に問題があるのではなく、「企業の採用慣習」と「大学側の指導」に原因があると僕は考えています。

大学で学んだ学生が将来の日本を背負うという意味では、大学は10年後の日本社会を映す先行指標です。大学で学んだことや大学で行った研究が、将来の日本の競争力の源泉になります。

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