「海辺の事故」がいつまでも減らない根本原因 ライフセーバーの飯沼誠司氏も警告する

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飯沼氏は、この協力体制について、「実はいまも、われわれライフセーバーの活動の一部は、海上保安庁の活動に組み込まれています。具体的には、海上安全指導員として、プレジャーボートの海上における安全航行に関するマナー周知などを行っています。

ただ、これはあくまでも、地域ごとの取り組みです。大きく考えれば、日本全国の海辺の事故をなくすというのは、ライフセーバー協会の大きなミッションでもありますので、海辺の監視体制の強化に向けて、今後の包括的な連携に期待したいです」と、今後のさらなる海辺の安全体制の強化に期待を込める。

ライフセーバーがいる場所で泳ごう

では、夏の海辺でのひとときを、安全に楽しく過ごすには、どのようにすればいいのだろうか。事故の発生場所を見ると、遊泳可能な海水浴場以外での事故が全体の55%に上る。遊泳可能な海水浴場に多くの人が訪れていることを考えると、遊泳可能な海水浴場以外の場所では、一気に事故の発生確率が上がると言える。

なぜなら、それらの場所では、ライフセーバーは存在しないからだ。

ライフセーバーがいない場所では、水の危険を察知できずに遊泳してしまい事故になるケースが多いうえ、万が一の事故の発見が遅れてしまう。

逆に、ライフセーバーがいれば、海水浴客は、危険な場所には行かないように案内されたり、安全な場所に誘導されたりすることで危険を回避できる。

「遊泳可能エリア外では、離岸流の発生や、風向きなどの変化を察知するライフセーバーはいません。そのような危険を回避するためにも、必ずライフセーバーがいる遊泳可能なエリア内で楽しむようにしてほしい」

海での楽しい思い出を作るために注意してほしいことを話してくれた飯沼氏(筆者撮影)

もう1つ、注意が必要なのは、浮き具だ。動物型の浮き具をよく見かけるが、陸からの風によって、遊泳区域外まで流されてしまうケースが非常に多いという。

「大きな浮き具は、本当によく流されます。浮き具があるから安全だと思っていても、それが自分の体から離れた瞬間にパニックになって溺れるケースが多い」

海辺のひとときを、楽しい夏の思い出にするためにも、ぜひともいま一度、海の危険性を確認し、不測の事態に陥ることのないよう、海辺の知識をアップデートしたいものだ。

瀬川 泰祐 ライター

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せがわ たいすけ / Taisuke Segawa

1973年生まれ。北海道出身。エンタメ業界やWeb業界での経験を活かし2016年よりフットサルを中心にスポーツ分野のライティング活動を始めている。モットーは、「スポーツで繋がる縁を大切に」。

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