「海辺の事故」がいつまでも減らない根本原因 ライフセーバーの飯沼誠司氏も警告する

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真夏の太陽の下で、熱中症の危険にさらされながら、海水浴客の安全に気を配るのは、いくら人命救助の最前線に立つライフセーバーといえども、決して簡単なことではないだろう。この点について、25年間、海辺に立ち続けてきた飯沼氏は、次のように言う。

「長い間、現場に立って、さまざまな事故を見てきました。経験とともに、絶対に目を離してはいけないという緊張感は年々増してきます。だからこそ、もっと多くの人にライフセーバーの存在を知ってもらわないといけません。われわれの注意喚起に耳を傾けてもらえれば、事故は確実に減るはずです。

そのためにも、定期的に放送を流すことや、海水浴場内を巡回して、お客さんにアプローチ(声がけ)するという地道な活動を心がけています」

こうして、ビーチでの監視・救助活動を終えるのは、おおよそ16時〜16時半頃だ。後片付けを終えた後、本部に戻り、その日に起きた監視・救助活動について、報告し課題を話し合う。本部では、ビーチごとの報告内容を集計し、ライフセービング協会や、行政機関に報告書を送る。機材・備品を倉庫へ戻してようやく解散かと思うと、彼らは17時半から再び海に戻ってトレーニングを行う。

その後、19時半頃から、幹部メンバーのみで夕食をとりながら、翌日のおおよその配置を決めて、やっと家路につく。幹部メンバーたちがホッと息をつくことができるのは21時過ぎだ。

海水浴場での事故の実態は?

このように海、そして人命と真正面から向き合うライフセーバーたち。彼らは、実際にどのような事故に対応しているのだろうか。

重溺者救助や軽溺者救助のほか、浮き輪とともに沖に流されてしまった海水浴客をボードに乗せて浜まで運ぶ安全移送、迷子の捜索、ケガ人の応急措置など、事故への対応は多岐にわたる。

さらに、これらの事故を未然に防ぐために、ライフセーバーたちは自ら海の中に入り、レスキューボードを使いながら、安全な場所で泳いでもらうように海水浴客を誘導する、いわゆるラインコントロールを行い、海浜を巡回して注意喚起をしながら、事故を未然に防ぐ努力を怠らない。

ライフセービング協会に提出するレポート書式。事故の内容は多岐にわたる(画像:日本ライフセービング協会ホームページより)
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