「海辺の事故」がいつまでも減らない根本原因

ライフセーバーの飯沼誠司氏も警告する

海で起こる子どもの事故の原因について語る飯沼氏(筆者撮影)

「確かに全体の比率で言えば、10歳未満の子どもの事故は少ないですが、大人が子どもをしっかり見ていないから、子どもの事故が一定数発生している。

結局、大人の知識が足りないということに尽きます。海水浴場でよくあるのは、親が“子どもがいなくなってしまった”と言って捜索を求めてくるケースです。その場合、大抵の親は“ちょっと目を離した隙に”と言います。

そこで、最後に見たのはどこで、それはどのくらい前か、子どもはどんな様子だったかなどを聞いてみます。すると、多くの場合、何十分も目を離していることに気づきます。大人だろうが子どもだろうが、人が水に入った時点で、海の中にはさまざまなリスクがあるということをもっと知るべきです」

加えて、飲酒後の入水の危険性についても言及する。

「飲酒して海に入るなんて、まさに大人の過信ですよね。昨年、われわれがライフガードしている海では、遊泳エリア外で、2件の重溺者事故が発生していますが、その2件とも飲酒が認められています」

実際、海上保安庁の数字でも、飲酒が認められた事故者の死亡・行方不明率は50%と、飲酒が認められなかった事故者と比べて、22ポイントも高くなっている。いかに飲酒後の入水が危険かがわかるだろう。

海辺を見守るライフセーバーの1日

鋭い眼差しを海辺に送り続けるライフセーバーは、海水浴客が、海での1日を楽しく過ごし、無事に帰路についてもらうことを1つの使命としている。彼らは、事故を未然に防ぎ、いざというときには迅速に救助・救命措置が取れるよう、その準備を怠らない。ここでは、館山サーフクラブに所属するライフセーバーたちの1日を紹介しよう。

館山サーフクラブは、千葉県館山市と南房総市から委託を受けて、6カ所の海水浴場の管理を行っている。所属する約70人のライフセーバーたちの夏の1日は、朝陽が昇る前から始まる。起床して身支度をすませると、まずはビーチに向かい6~7時までの1時間ほど、海に入ってトレーニングをする。

自らのライフセービングスキルの向上を図るとともに、水温や潮の流れ、風の状況など、日々変わる海のコンディションを把握するのだ。

その後、朝食を済ませ、7時半からミーティングをし、ビーチごとにその日の体制や役割分担、配置などを確認。その後機材の準備や備品のチェックを行う。

さらにもう一度集まって共有事項を確認し合った後、それぞれが担当のビーチに移動し8時半には配置につく。ビーチに到着次第、すぐに海の水質・水底・水温・水流・水深をチェックし、遊泳状況を判断するとともに、その情報を自治体に伝える。その情報は観光協会や自治体のホームページなどで公開される。

そして、9時には海水浴場で場内アナウンスを流し、ようやくビーチでの長く過酷な監視業務本番がスタートする。

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