アジア狙う謎の日本ブランド「ユビソオ」の正体 パクリのパクリ?がマレーシアで急拡大

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同省がムムソウの扱う2732点の商品を調べたところ、99.3%が中国製だったことが判明。ムムソウは、韓国製と消費者が誤認するような広告などを出していたという。ただ、このケースも韓国の企業イメージや文化をコピーしたことを問われたものではない。「文化の剽窃」への対応の難しさを改めて示した形だ。

日本の自動車産業のようにいいものをまねることは創造の一つと言えなくもない。日本のラーメンの世界にも、「インスパイア系」というジャンルがある。例えば、その量や盛り付けで固定ファンが少なくない「ラーメン二郎」に影響を受け、それを模倣したり、一部の要素を取り入れたりした「二郎インスパイア系」と呼ばれる店がある。日本はフランスパンやカレー、パスタを取り入れ、すし文化は世界に広まった。

トルコでも「アジア系ブランド」が台頭

だが、粗悪な商品で日本のイメージを傷つけられてはたまらない。日本ブランドを積極的に発信している内閣府知的財産戦略推進事務局のクールジャパンの担当者は「模倣品対策として関係省庁と連携して個別に対応していく。食品や商品などがパクられて事故が起きた場合、日本のブランド価値が毀損することにもなるので問題だ」と説明する。

世界でこうした形態の店舗は増えており、筆者もアジア各国の旅行先や中東のエジプトなどで目にしている。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト電子版によると、業界大手のメイソウは、2017年時点で60カ国以上に2600を超す店舗を展開している。インドや東欧などの新興市場を重視し、2020年までに1万店、1000億元(約1兆5790億円)の売上高の達成を目指す。

ジェトロのイスタンブール事務所によると、トルコでもアジア系ブランドの生活雑貨店が急速に拡大している。メイソウやムムソウ、中国系のヨヨソウ(YOYOSO)などが高級ショッピングモールに店舗を構えており、オンラインショッピングやSNSでの情報発信も重視する。トルコメーカーにはないデザインのアイテムが手の届きやすい価格で販売されて消費者の反応も上々という。

少子高齢化で市場が縮小する日本とは異なり、中国やアジア諸国は活気とエネルギーに満ちている。

いいものはまねて、迅速な意思決定の下で取りあえず実行に移す、というアジア的なエネルギーが急成長の原動力だろう。コンプライアンス(法令遵守)をあまり考慮しなくてもいいという点もあるはずだ。ユビソオの急拡大は、日本のブランド価値を改めて示す一方で、意思決定の遅さなどの問題点も浮き彫りにしているといえるだろう。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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