「香港のデモ」に中国人が送る超冷ややかな視線 かつて憧れた香港はたいしたことなかった

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中国が世界第2位の経済大国になり超大国への道を歩み始める前の話である。今では人々の世界を見る目は変わった。ニューヨーク市の時代遅れの地下鉄網やシリコンバレーの穴だらけの幹線道路に多くの中国人ががっかりするように、境界を越える自由な移動や言論の自由という香港モデルに対する関心は急速に失われている。今では多くの中国人が、香港は中国本土なしではこれほど豊かになれなかったと信じている。

今では世界は中国政府に直接話を持っていく。香港の超高層ビルは上海や深圳の高層ビルですっかり影が薄れてしまった。多くの香港の芸能人は中国本土の第1言語である北京語を学んでいる。香港の小売業者は、高級品に散財する本土の観光客にますます頼りつつある。

本土の人にとって香港は「不安定」

香港人はかつてほど裕福に見えない。今では本土の人々は、香港住民の大半が、メロドラマで見たように海を望むヴィラに住み、高級車に乗り、ぜいたくなレストランで食事をするわけではないことに気づいている。たいていは自分たちの北京や上海の家よりもずっと狭い窮屈なアパートに住み、世界で最も物価の高い都市の1つである香港で生活するために長時間働いている。

また、本土からの訪問者は不当な扱いを受けることがある。正しいかどうかは別として、中国の富裕層が高額のアパートにお金をつぎ込む中、香港人の多くは住宅費の高騰を中国本土の人間のせいにする。本土の人を失礼で無教養であるとし、きちんと列に並ぶことができない、あるいは子どもに道で排尿させるなど、ステレオタイプなイメージで語る。これは双方において対立や反感へとつながった。

香港は今では、中国本土の多くの人が最も恐れるものの源となった。不安定さだ。彼らの目にうつるのは、個人の権利をめぐる戦いではない。恩知らずの分離主義者そして厄介者だ。そして彼らは、いずれは中国共産党がそのやり方を貫くと信じている。

「香港の1番いいところは手に入れたい、でもあの無意味な地元の活動には参加するつもりはない」と、本土から来た香港住民のチャンは言う。「見返りがなければ投資する意味もないから」。

(執筆:Li Yuan記者)

(C) 2019 The New York Times News Services 

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