次世代を切り開いた新幹線「試験車両」列伝 どこまで行けるか?続くスピードへの挑戦

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1990年代前半は、時速300km以上での超高速運転に向けた試験車両が相次いで登場した。

JR西日本のWIN350(右)。JR東海の大井車両基地で報道公開され、300系(左)や100系(中央)と並んだ(筆者撮影)

山陽新幹線での営業最高時速350kmを目指して1992年に開発されたのが、JR西日本の500系900番台試験車だ。一般的には「WIN350」の愛称で呼ばれ、地上設備を時速350km対応に整備した小郡(現・新山口)と新下関間で高速試験を行った。1992年8月には目標の350.4km/hを達成し、日本初の時速300km運転を実現した500系量産車へのステップとなった。

WIN350の報道公開は、今では考えられないがJR東海の大井車両基地で行われ、当時新製されたばかりの300系量産車や100系と並べて公開された。JR会社間の垣根を越えた粋な試みで、今思えば感慨深いものがある。

JR東日本の高速試験車「STAR21」東京方先頭車の952形(筆者撮影)

一方、WIN350の登場とほぼ同時期の1992年にJR東日本が製作したのが「STAR21」の愛称で知られる高速試験車である。この電車の特徴は、編成が一般的なボギー車の952形4両と連接構造の953形5両で構成されていたことだ。騒音やトンネル微気圧波、地盤振動の低減などのために車体は大幅に軽量化され、先頭部は騒音や高速走行時の空気抵抗を緩和するために直線的なとがった形状で、両端でそれぞれ形が異なっていた。

登場後は東北新幹線仙台以北で走行試験を開始し、1993年12月21日には上越新幹線の燕三条駅付近で最高時速425kmを達成している。

日本最速記録の300X

1995年にはJR東海が次世代の超高速試験車955形電車、愛称「300X」を開発した。筆者は同年の浜松工場での報道公開で、その全貌を見て驚きと興奮を隠しきれなかった。まず目を見張ったのが、先頭車が東京方はラウンドウエッジ型、博多方はカスプ型と呼ばれるまったく異なる形だったことだ。パンタグラフから発生する音を低減するためのカバーも超大型のものを装着していた。

300Xのカスプ型先頭車(筆者撮影)

この300Xは1996年7月26日深夜の試運転において、米原―京都間の野洲付近でリニアモーターカーを除く鉄道車両では日本最速となる時速443.0kmを記録している。

これらの試験車はその後の新幹線高速化に大きな功績を残し、1990年代後半から2000年代前半にかけてその役割を終えた。WIN350は登場から約4年後の1996年5月末に、STAR21も1998年2月に廃車。300Xも2002年に引退した。

各列車の先頭車はいずれも保存されているが、中でもWIN350の博多方先頭車、STAR21の東京方先頭車(952形)、300Xのカスプ型先頭車は、滋賀県米原市の財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)風洞技術センターに3両並んで保存されており、通常は非公開だが外からその姿を見ることができる。

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