次世代を切り開いた新幹線「試験車両」列伝 どこまで行けるか?続くスピードへの挑戦
21世紀に入ると、さらに高速運転を目指す試験車両が登場した。近未来型のモダンな超高速試験車、JR東日本の「FASTECH(ファステック)360S」が誕生したのは2005年6月のこと。いかにも速いと思える斬新なデザインは、のちのE5系を予感させる電車だった。
360Sの数字は営業最高時速360km、Sは「Shinkansen」の頭文字を表している。先頭部は約16mのロングノーズで、東京方の1号車は「ストリームライン」、青森方の8号車は「アローライン」と呼ばれるE5系に通じる形状となった。超高速走行時の急制動を補助するために屋根から空力抵抗板が出る装置も組み込まれ、その形が「ネコの耳」に似ているところから「ネコミミ新幹線」とも言われ人気を博した。
この電車は営業用車両と同じ配置の座席や洗面所、車販準備室なども完備していた。筆者は幸いなことに2007年に特別添乗取材し、座席と運転台で時速330kmを体験した。テーブルにタバコを立てて揺れ具合を私なりに実験したが、乗り心地は300km超えでも実にスムーズだと感心した。
その後も走行試験は続けられたが2009年9月7日付で廃車、残念ながら保存されず全車解体されたという。試験結果やコンセプトはE5系、E6系に受け継がれ、日本一の営業最高時速320kmで走り続けている。
22mの長ーい鼻
令和の始まりとともに今年5月9日、報道陣の前に颯爽とその全貌を現した試験車が「ALFA-X」である。
この電車は北海道新幹線の札幌延伸を見据え、世界最高の時速360kmでの営業運転を念頭に開発された。遠心力や揺れを抑える車体傾斜制御装置、動揺防止制御装置のほか、地震発生時の緊急停止の際、空気抵抗を利用して制動距離を短縮させる空力抵抗板ユニットや、リニア式減速度増加装置などを搭載している。
前頭形状はそれぞれ異なり、東京方の1号車はE5系のノーズ(約15m)より少し長い程度。新青森方の10号車のノーズは1号車より約6mも長い約22mで、この車両はほとんど全体が「鼻」と言っていい。すでに始まっている走行試験では、環境性能、地震対策を含む安全性の向上を検証する。2022年3月までの間、仙台―新青森間を中心に夜間に試験走行を繰り返し、時速400km走行も予定されているという。
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