次世代を切り開いた新幹線「試験車両」列伝 どこまで行けるか?続くスピードへの挑戦
最後に、海外の高速試験車両について触れよう。
日本の新幹線に追いつけ追い越せと、フランスではTGVが1981年9月27日にパリ―リヨン間に開業し、当時世界最高の時速260kmで営業運転を開始した。営業運転に先立って同年2月に行われた試験走行では、当時の世界最高速度である時速380kmを記録した。
TGVの試験車は、1972年に登場した電気式ガスタービン動車、TGV-001形で、同年12月8日には時速318kmを達成した。だが、当時の世界的なオイルショックのため、燃料を大量に使うガスタービン式から電気方式に変更せざるをえなくなり、前後に電気機関車を連結した現行のTGVのプロトタイプは1974年に完成した。
イギリスではガスタービン式の高速試験車両「APT-E (Advanced Passenger Train Experimental)」の試験運転を1972年頃から始めた。次いで電気方式のAPT-Pが完成しインターシティで試験的な営業運転を開始したが、相次ぐ車両トラブルで結局APT計画は挫折。車体傾斜機構だけはイタリアのフィアット社に売却され、今では世界的に普及した振子式車両「ペンドリーノ」に使用され成功を収めている。
速度記録達成に立ち会う
ドイツの高速列車ICEは、今では全国にネットワークを広げ国際列車としても活躍しているが、その試験車は1985年に北部ドイツのビーレフェルト―エッセン間(在来線区間)で試運転を開始した。
1985年に時速300kmでの試験走行に成功し、1986年11月に行われた公式試運転列車には筆者も招待され、前記の区間で当時のドイツ鉄道最高速度記録である時速345kmを達成した。車内は座席のほかサロンルームも完備し、座席背面の電話からカードで国際電話も通話できるサービスもあった。速度記録達成の瞬間には車内でシャンパンがふるまわれて新記録樹立を祝った。この模様はTBSで筆者のインタビューともども放送された。
さらに1988年5月1日には、フルダ―ヴュルツブルク間の高速新線で行われた試運転で時速406.9kmの世界記録(当時)を達成。試験車は13年間にわたり50万kmを走行後、2000年に廃車されたが、ドイツの高速列車の開発に大きく貢献したとして現在はミュンヘンのドイツ博物館で保存展示されている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら