日本電産はボッシュのようなメーカーになる 永守社長に聞く、日本電産の生きる道(下)

拡大
縮小

格付けの問題もあるので借り入れを増やし、財務内容が悪くなるのはよくないと思うが、それをあまり気にしすぎると、売り上げが伸ばせない。利益率より利益の絶対額を大きくすることに変わったのだ。過去5年はデフレ下だったので売り上げは伸びない。利益率を改善して利益を出さざるを得なかった。

しかし、今や逆で、これだけグローバルに展開できる体系ができたので、世界に打って出ることができる。世界でトップラインを伸ばしていく。

ただ、モーターを中心とした「回るもの、動くもの」を作っていくという姿勢、理念は変わらない。基本は創業以来、何も変わってない。それとハードワークも。私も含め、いい加減、ゴルフでもやって楽しもうという社員はいません。

金メダルなら、スケート基金を作る

ながもり・しげのぶ●1973年に28歳で日本電産を設立。積極的なM&Aで、これまで45社をグループ化。再建請負人の異名も。

――2月にソチ五輪が開催されますが、グループ内にはスピードスケートの有望選手がいますね。

前回(バンクーバー五輪のスピードスケート500メートル)は、銀メダルと銅メダルだった。今回狙うのは、もちろん金メダルだ。これには力が入っている。

今回、金メダルを取れたらスケート基金を作る。会社の部活動としてやっていると、業績が悪くなるとやめてしまう。そうならないよう、ポケットマネーで基金を作る。将来、会社がなくなったとしても、スケート部だけが残るくらいのものが形にできないか考えている。

そのためにも今回、好成績を残してほしい。金メダルが取れれば、そこに有望な選手も集まってくる。今、日本電産サンキョーのスケート部には8人しかいない。それを20人くらまで増やしたい。24時間、365日練習ができる専用練習場も造ってやりたい。そのためには50億円くらいかかると思うが、50億円の基金を作って運用すれば不景気も関係なくなる。

とにかくグループをあげて応援している。こういうマイナーなスポーツは、国民により大きな感動を与える。会社の経営では、全国民に感動を与えることはできない。これはまったく別物。経営者である自分は経営で全国民に感動を与えたいが、それは無理。やはりそこはスポーツの力だろう。

(撮影:今井康一)

筑紫 祐二 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT