内野聖陽の熱演から見えた「男らしさの変容」 インテリから乙女なゲイまで演じきる実力派

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映画『黒い家』で主役を演じた当時の内野聖陽さん。写真は1999年当時(写真:時事通信)

モンスター大竹(と西村雅彦)にじわじわと追い込まれ、ストレス過多でEDにもなる内野。自宅は荒らされ、彼女(田中美里)も大竹に拉致監禁され、しまいには会社で襲われて凄絶な恐怖を体験する。

内野が全身で感じた恐怖はそのまんま観客の体感となったほど、トラウマフルコースの役を演じきった。このトラウマも、後々のキーワードになってくる。

2000年代は「圧」が強めな男気路線

2000年代に入ると、舞台もさらに活躍の場を広げ、ミュージカルにも数多く出演。時代劇でも重宝された内野は、技術も迫力も外連味も身に付けていく。

上戸彩主演の「エースをねらえ!」(テレ朝)では、国民的知名度の高いキャラクター・宗方仁を演じるハメに。個人的にこれはギャグドラマだと思っていたのだが、内野のキャラクター研究の熱の入れようが話題になった。このあたりから徐々に内野の醸し出す「圧」が強まっていく。大河「風林火山」の主演も、圧という実力があったからこそ。

この頃は、世界的不況で若者が希望を抱けない時代。世知辛い現実から逃れたいのか、ドラマ界では「破天荒」「型破り」な主人公が流行。とくに強いヒロインが台頭し、天海祐希や観月ありさ、篠原涼子、米倉涼子あたりが「強い女系ドラマ」を展開。そんな中で内野は男気路線をひた走る。「臨場」「臨場 続章」(テレ朝)は、植物と動物を愛する型破りな検視官役だ。

黒い革ジャンにワークブーツ、傲慢だが検視の見立ては鋭く、自殺や事故に見える状況でも殺人事件と看破する能力が高い。家庭菜園で育てたきゅうりや大根などにかぶりつきながら現場に入り、外連味たっぷりに検視を行う。見立てが甘く、先入観でモノを言う部下(渡辺大・平山浩行)を罵倒したり、時には殴ることもあるが、人材育成能力はかなり高めだ。

変わり者だが、実力はある。組織に属していても、己の魂と正義は決して譲らない。そんな内野に男らしさや男気を感じて、頼もしいと感じた女性も少なくない。堅気より破天荒、出世や上昇志向よりも厚い人情重視。さらに言えば、一途という側面も、当時の女性たちが求める「男らしさ」だったのかもしれない。

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