内野聖陽の熱演から見えた「男らしさの変容」

インテリから乙女なゲイまで演じきる実力派

「臨場」の内野は妻が殺害された悲しい過去をもつ。その妻の趣味だったガーデニングや家庭菜園を引き継いでいるという設定だ。スマートでエリートなモテ男ではない。案外純粋で一途な男に、女性たちは心を奪われたのだ。

そう言えば、「臨場」よりも前に、「ゴンゾウ・伝説の刑事」(テレ朝)というのもあった。内野は元警視庁捜査一課の敏腕刑事だったが、ある事件を機に所轄署の備品係に成り下がっている役だ。基本的にはやる気ゼロ、出世にも事件解決にも興味をもたず、変人扱いされている。

「伝説の刑事」と噂されているが、過去のある事件のトラウマでパニック発作を起こすことも。ある事件とは、同棲していた彼女(池脇千鶴)が自宅で殺害されたことだ。軽薄を装いつつも、実は心に深い傷を抱えていて、女性に一途でもあった。

ちょうど世の中が、不倫や浮気に手厳しくなり始めた時代でもある。浮気は「男の甲斐性」だの「芸の肥やし」だのと言われてきた歴史に、女性たちは一斉にNOをたたきつけた。男らしさとは「一途さ」であり、「人の痛みがわかること」とも要約できる。トラウマを抱えた男に惹かれる、そんな空気が確かにあった。

内野の魅力全開「スローな武士」

インテリ・エリート・堅気から、破天荒・型破り・変人へ。女性が求める男らしさの移り変わりをまさに体現してきた内野。その後、「男気ダダ漏れ、圧強め」は急速に浸透して、起用がパターン化されていく。

TBSの日曜劇場がまさにその典型で、「JIN」の坂本龍馬役、「とんび」の父親役など、熱い・厚い・暑い男だった。「ブラックペアン」は逆に冷徹な医師役で、外連味たっぷりにドラマ全体の重厚感の底上げに貢献したけれど。

このまま、圧強めでいくのか。個人的には、トラウマや悲劇を抱えてもだえ苦しむ内野も観ていたいし、できれば女に虐げられる内野も観てみたい。そんな願望を抱いていたときに、内野のポテンシャルと魅力を全開にする作品が放送された。「スローな武士にしてくれ~京都撮影所ラプソディー~」(NHKBSプレミアム)である。

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